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    レポート
    冨嶽三十六景への挑戦 北斎と広重
    東京都江戸東京博物館 | 東京都
    日本を代表する浮世絵の名作、葛飾北斎の「冨嶽三十六景」全46図一挙公開
    年が離れた風景画のライバルは歌川広重、北斎への対抗心から新しい表現へ
    風景画で双璧をなす二者の挑戦をストーリー展開で浮き彫りに。撮影自由♪

    日本を代表する浮世絵の名作といえる、葛飾北斎「冨嶽三十六景」。海外でも人気を誇るこの作品を描いた時、北斎は70歳を越えていました。

    一方、歌川広重はこの時30歳代後半。「冨嶽三十六景」に触発されるように、風景画の名作を世に送り出す事となります。

    年の離れた風景画のライバルを、それぞれの歩みをたどりながら紹介する展覧会が、江戸東京博物館で開催中です。


    「冨嶽三十六景への挑戦 北斎と広重」会場入口 深川万年橋をくぐって展示室へ
    「冨嶽三十六景への挑戦 北斎と広重」会場入口 深川万年橋をくぐって展示室へ


    展覧会は「プロローグ ― 広重、絵師を目指す」から。最初に展示されているのは、歌川広重こと安藤徳太郎が10歳で描いた《三保松原図》です。この作品は、広重が生涯手元に置いたと伝わります。

    広重は寛政9年(1797年)、火消の家に生まれました。絵師として身を立てる事を志し、歌川豊広にの門下に入門。天保3年(1832)までは、家業である火消と兼業的に活動していました。


    安藤徳太郎(歌川広重)筆《三保松原図》文化3年(1806)東京都江戸東京博物館蔵
    安藤徳太郎(歌川広重)筆《三保松原図》文化3年(1806)東京都江戸東京博物館蔵


    第1章は「風景画への道 ― 北斎のたゆまぬ努力」。北斎は宝暦10年(1760年)生まれ。その名は海外でも知られますが、その画技は天性の才能だけでなく、たゆまぬ努力があったからこそ。画業の初期は役者絵から始まり、画号も春朗から宗理、北斎、戴斗、為一など次々に変えながら、独自の道を極めていきました。


    (左から)葛飾北斎画《新板浮絵忠臣蔵 第5段目》享和末~文化初年(1804-07)頃 / 葛飾北斎画《新板浮絵忠臣蔵 第3段目》享和末~文化初年(1804-07)頃 ともに東京都江戸東京博物館蔵
    (左から)葛飾北斎画《新板浮絵忠臣蔵 第5段目》享和末~文化初年(1804-07)頃 / 葛飾北斎画《新板浮絵忠臣蔵 第3段目》享和末~文化初年(1804-07)頃 ともに東京都江戸東京博物館蔵


    時代背景として、18世紀後半から19世紀初頭の浮世絵では、西洋絵画の影響が見られるようになったことも抑えておきましょう。すでに知られた名所も、西洋画風に描かれると新しい作品として見られるようになり、その傾向は「冨嶽三十六景」にもつながっていきました。


    (左から)昇亭北寿画《東都日本橋風景》文化期(1804-17) / 渓斎英泉画《蘭字枠江戸名所 六郷渡》文政中期(1820-25) ともに東京都江戸東京博物館蔵
    (左から)昇亭北寿画《東都日本橋風景》文化期(1804-17) / 渓斎英泉画《蘭字枠江戸名所 六郷渡》文政中期(1820-25) ともに東京都江戸東京博物館蔵


    第2章は「葛飾北斎『冨嶽三十六景』の世界」。江戸東京博物館所蔵の「冨嶽三十六景」全46図が一挙に公開されます。

    「冨嶽三十六景」が刊行されたのは天保2年(1831)頃から。北斎による渾身の風景画は大評判となり、36図に10枚が追加されて計46図になりました。


    第2章「葛飾北斎『冨嶽三十六景』の世界」
    第2章「葛飾北斎『冨嶽三十六景』の世界」


    この章には、いつもは常設展示室にある「北斎の画室模型」も、お引越ししてきました。弟子の露木為一の描いた絵をもとにした模型で、夜着をかぶったまま絵を描いているのが北斎で、脇にいるのが娘の阿栄(応為)。北斎は部屋の片付けができず、汚れるたびに引っ越したといわれています。


    「北斎の画室模型」
    「北斎の画室模型」


    第3章は「新たな風景画への道 ― 広重の挑戦と活躍」。北斎の「冨嶽三十六景」が終了した頃に始まったのが、広重の「東海道五拾三次之内」シリーズ。広重がこのシリーズで描いたのは、名所だけでなく、四季や時間の移ろい、そして人々の心象までも表現。北斎とは異なる世界を生み出しました。


    (左から)歌川広重画《東海道五拾三次之内 吉原 左冨士》天保5-7年(1834-36)頃 / 歌川広重画《東海道五拾三次之内 原 朝之冨士》天保5-7年(1834-36)頃 ともに東京都江戸東京博物館蔵
    (左から)歌川広重画《東海道五拾三次之内 吉原 左冨士》天保5-7年(1834-36)頃 / 歌川広重画《東海道五拾三次之内 原 朝之冨士》天保5-7年(1834-36)頃 ともに東京都江戸東京博物館蔵


    「東海道五拾三次之内」シリーズの大ヒットで、風景画の第一人者として認められた広重。版元から別の風景画シリーズを依頼され、江戸名所を取り上げたシリーズを次々に制作する事となりました。

    「江戸近郊八景」シリーズは、江戸の近郊八ケ所を描いた作品です。「羽根田落雁」は羽田村の洲崎の先にあった羽田弁財天を、雁の群れとともに叙情豊かに表現しました。


    歌川広重画《江戸近郊八景 羽根田落雁》天保8-9年(1837-38)頃 東京都江戸東京博物館蔵/p>
    歌川広重画《江戸近郊八景 羽根田落雁》天保8-9年(1837-38)頃 東京都江戸東京博物館蔵/p>


    最後は「エピローグ ― 広重、“富士”を描く」。北斎の没後、「不二三十六景」「富士三十六景」を制作した広重。そのタイトルや枚数からも「冨嶽三十六景」の北斎への対抗心が、強く見受けられます。

    還暦を迎えた翌年に制作が始まったのが、斬新な構図の「名所江戸百景」。広重もまた、老境を迎えてなお、新境地を拓こうとしていったのです。


    歌川広重画《名所江戸百景 水道橋駿河台》安政4年(1857)閏5月 東京都江戸東京博物館蔵
    歌川広重画《名所江戸百景 水道橋駿河台》安政4年(1857)閏5月 東京都江戸東京博物館蔵


    展示作品は全て江戸博コレクションという事もあり、写真撮影も自由。良く知られた作品が多いですが、あらためて両者の作品世界を見つめ直す、絶好の機会ともいえそうです。

    残念ながら緊急事態宣言が発令にともない会期の冒頭は休止になってしまいましたが、オンラインで楽しめるバーチャルツアーも公開中。こちらは公式サイトからお楽しみいただけます。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2021年4月16日 ]

    江戸東京博物館「冨嶽三十六景への挑戦 北斎と広重」会場風景
    《広重遺愛の品》(旅枕・袂落とし・煙草入れ・脇差・掛札)天保~安政(1829-58)頃 東京都江戸東京博物館蔵
    会場
    東京都江戸東京博物館
    会期
    2021年4月24日(土)〜6月20日(日)
    会期終了
    開館時間
    午前9時30分~午後5時30分(土曜日は午後7時30分まで)※入館は閉館の30分前まで
    休館日
    【4月25日~5月11日 展覧会は休止】毎週月曜日(ただし4月26日、5月3日は開館)
    住所
    〒130-0015 東京都墨田区横網1-4-1
    電話 03-3626-9974(代表)
    公式サイト https://www.edo-tokyo-museum.or.jp/
    料金
    特別展専用券
    一般 1,000円(800円)
    大学生・専門学校生 800円(640円)
    中学生(都外)・高校生・65歳以上 500円(400円)
    小学生・中学生(都内) 500円(400円)

    ※( )内は20名以上の団体料金。
    展覧会詳細 冨嶽三十六景への挑戦 北斎と広重 詳細情報

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