今日は滋賀県の美しい美術館、佐川美術館にやってきました。2022年は水木しげる 生誕100周年にあたり、ここ佐川美術館では、100周年を記念した展覧会が開催されています。
“百鬼夜行JAPAN”でしょうか?妖怪たちも大忙しです!

水庭の静けさがアートへの導入。佐藤忠良の『蝦夷鹿』がお出迎え

水木しげるの妖怪百鬼夜行展
水木さんの描く妖怪たちは“おどろおどろしさ”はなく、とても個性的で何かカワイイ友達のように思えてきます。どのように創作されたかというと、膨大な資料、史料を読み込み、各地の伝承を聞き取り生み出されたものでした。
いきなりエントランスで“ぬりかべ”さんのお出迎えをうけて出発です。

まずエントランスで「ぬりかべ」と挨拶
水木しげる(1922―2015)は鳥取県の境港で幼少期を過ごしました。ここで近所に住んでいた“のんのんばあ”との出会いが運命的だったようです。今回は直筆の漫画原稿も出展されていて試行錯誤した筆の跡を見ることができたり、水木さんが所蔵する重要な資料類も並び、机に向かってたくさんの妖怪画が誕生してゆく様子もうかがえます。
妖怪の誕生には江戸時代の絵師・鳥山石燕の『画図百鬼夜行』や、昭和の民俗学者・柳田國男『妖怪談義』が大きな役割をはたしていました。古書籍の挿絵をもとにした妖怪たちは忠実に姿を描き、ほんのり彩色するなど水木さんの筆が冴えます。『妖怪談義』には挿絵がありませんが、民話・伝承など語り継がれたものから妖怪たちの姿を生み出しました。

全国の民話などから創造された妖怪たち

趣向を凝らした展示風景

なつかしい水木作品も勢ぞろい
歌川国芳や葛飾北斎などの浮世絵がベースになって誕生したものもあり、並べて配置されているので理解度が上がります。

浮世絵などに元作がみられる妖怪たち
どのようにして水木ワールドの妖怪たちが生まれてきたのかを(先人、絵師たちからの継承)や(書籍から創造)という視点で順に紹介し、山・水・里・家の棲家ごとにも妖怪がクローズアップされています。
代表作「ゲゲゲの鬼太郎」には超有名妖怪がたくさんいるので、XR観光体験アプリを使って館内に隠れている妖怪探しに挑戦するなど家族一緒に楽しんでください。ポートレートのように並ぶ妖怪の絵はとても緻密な点描などを駆使していて、決してカラフルではないのですがところどころの彩色や線の太さ、濃淡がとても美しい絵画を作り上げています。

館内の妖怪を探して楽しめる仕掛けも随所に
連載漫画を執筆する一方、妖怪を紹介するという功績により今の妖怪ブームと呼べる独特の世界が生まれ、多くの水木ファンが集います。ミュージアムショップにも豊富なグッズが並び、図録、図鑑、ポストカードからお菓子まで賑やかニギヤカ!
館内のティールームは水面に浮かんだようで、全面ガラスを通して風にそよぐ水面やほんの少し秋色になった木々が心落ち着く場所。イノダコーヒーのおもてなしを味わえます。

ミュージアムショップ

ガラス張りの解放感あるカフェ
佐川美術館は収蔵品もさることながら常に充実した展覧会が企画されます。妖怪というテーマで幅広い年齢層を狙ったようですが、年配の男性が多く見受けられ、水木さんの世界観を楽しそうに観覧されていました。また企画展とは別に、平山郁夫、佐藤忠良、十五代吉左衛門・樂直入の展示室があり、じっくり鑑賞したいところです。
さて、友達になるならどの妖怪がいいでしょうか?一緒に連れて帰ればよい話し相手になってくれそうです。JR堅田駅から路線バスで15分、琵琶湖大橋を渡るルートで行きましたので比叡山やびわ湖の風景とともにちょっとした旅気分も味わえたアートの1日になりました。
[ 取材・撮影・文:ひろりん / 2022年9月27日 ]
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