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    レポート
    部屋のみる夢 ― ボナールからティルマンス、現代の作家まで
    ポーラ美術館 | 神奈川県
    コロナ禍で移動が制限され、誰もが多くの時間を過ごした「部屋」がテーマ
    アンリ・マティス、ピエール・ボナールなど、19世紀から現代までの約50点
    現代を代表する草間彌生とヴォルフガング・ティルマンスは新収蔵作品も

    コロナ禍で移動が制限されるなか、多くの人は部屋で過ごす時間が長くなったのではないでしょうか。

    自分自身にとって身近な空間である「部屋」は、美術家がしばしば題材にするモチーフのひとつ。19世紀から現代までの作品約50点で、部屋にまつわるさまざまな表現を紹介する展覧会が、ポーラ美術館で開催中です。


    ポーラ美術館入口 報道内覧会当日は雪でした
    ポーラ美術館入口 報道内覧会当日は雪でした


    会場は地下1階と地下2階。特に順路も定められておらず、窓をあしらった空間で、作家ごとに作品がまとめられています。

    大胆な色使いと筆致の作品で「フォーヴ」(野獣)と称されたのは、アンリ・マティス(1869-1954)です。日本でも人気が高く、4月からは東京で大回顧展も開催されます。

    マティスは壁掛けや調度、モデルの衣装にもこだわり、演出した室内空間を描きました。部屋は、このような様々な要素を作家が自由に操作できるため、自らの芸術を深めるのに最適な空間といえます。


    ポーラ美術館「部屋のみる夢」会場より (左から)アンリ・マティス《室内:二人の音楽家》1923年 ポーラ美術館 / アンリ・マティス《襟巻の女》1936年 ポーラ美術館
    (左から)アンリ・マティス《室内:二人の音楽家》1923年 ポーラ美術館 / アンリ・マティス《襟巻の女》1936年 ポーラ美術館


    続いて、ナビ派のエドゥアール・ヴュイヤール(1868-1940)。自宅の室内の母や姉をモデルに、明暗の効果を用いて、神秘的で暗示に満ちた空間を描きました。

    1900年以降、数多くの依頼を受けて手がけた肖像画においては、周囲のモティーフなどもふくめ、部屋のありよう全体が描かれています。


    ポーラ美術館「部屋のみる夢」会場より (左手前)エドゥアール・ヴュイヤール《書斎にて》1927-1928年 ヤマザキマザック美術館 / (右奥)ベルト・モリゾ《ベランダにて》1884年 ポーラ美術館
    (左手前)エドゥアール・ヴュイヤール《書斎にて》1927-1928年 ヤマザキマザック美術館 / (右奥)ベルト・モリゾ《ベランダにて》1884年 ポーラ美術館


    ピエール・ボナール(1867-1947)も、ナビ派の一員です。生涯にわたり、恋人や家族、友人などの身近な人々や、自宅の室内や食卓など、身の回りのものを描きました。

    特に数多く描いたのが、妻のマルトです。マルトは一日に何度も入浴する習慣があり、ボナールは浴室や化粧室にいる彼女をさまざまな構図で描いています。


    ポーラ美術館「部屋のみる夢」会場より (左から)ピエール・ボナール《山羊と遊ぶ子供たち》1899年頃 ポーラ美術館 / ピエール・ボナール《りんごつみ》1899年頃 ポーラ美術館
    (左から)ピエール・ボナール《山羊と遊ぶ子供たち》1899年頃 ポーラ美術館 / ピエール・ボナール《りんごつみ》1899年頃 ポーラ美術館


    佐藤翠(1984-)と守山友一朗(1984-)は、2021年に初めて二人展を開催。今回は共作を含んだ新作の数々で、ひとつの空間を構成します。

    佐藤翠は、色とりどりの洋服が並ぶクローゼットや花々を、あざやかな色彩で表現。守山友一朗は、日常の場面や旅先の風景を観察し、その奥に潜むもうひとつの世界を描きます。


    ポーラ美術館「部屋のみる夢」会場より 佐藤翠+守山友一朗
    佐藤翠+守山友一朗


    髙田安規子・政子(1978-)は、一卵性双生児のアーティストユニット。本展では、窓や扉をモチーフにした新作のインスタレーションを展示しています。

    開かれた無数の窓や、鍵を挿したままの扉は、閉鎖から開放へと段階的に向かっている現状を示唆しています。


    ポーラ美術館「部屋のみる夢」会場より 高田安規子・政子《Open / Closed》2023年 作家蔵
    高田安規子・政子《Open / Closed》2023年 作家蔵


    下のフロアに進むと、現代を代表する作家である草間彌生と、ヴォルフガング・ティルマンス。それぞれ、新収蔵作品も初公開されています。

    ヴォルフガング・ティルマンス(1968-)は、ドイツ出身の写真家。1990年代に自らを取り巻く日常を捉えた作品で脚光を浴び、第一線での活動を続けています。

    ティルマンスの写真の舞台でしばしば登場するのが、彼自身が拠点とした住居やアトリエです。自身の日常に向ける親密なまなざしが反映されています。


    ポーラ美術館「部屋のみる夢」会場より ヴォルフガング・ティルマンス《あふれる光》(a)~(d)2011年 ポーラ美術館
    ヴォルフガング・ティルマンス《あふれる光》(a)~(d)2011年 ポーラ美術館


    前衛芸術家の草間彌生(1929-)は、幼少期から幻視や幻聴を体験し、網目模様や水玉が増殖する作品で、世界中から注目を集め続けています。

    草間の作品で、ベッドをモチーフにしたものはこれまでに2点制作されており、《ベッド、水玉強迫》はそのうちの1点です。白地に赤色の斑点は軽やかな印象ですが、ベッドの内側には布製の突起物が増殖し、異様さが感じられます。


    ポーラ美術館「部屋のみる夢」会場より (手前)草間彌生《ベッド、水玉強迫》2002年 ポーラ美術館
    (手前)草間彌生《ベッド、水玉強迫》2002年 ポーラ美術館


    自分の部屋は安心をもたらすとともに、外界から隔絶された閉塞感も覚えます。変化が乏しい日常が流れていく空間ですが、親しい人たちが集う特別な場所でもあります。

    パンデミックから日常を取り戻しつつあるこの時期に、部屋という小さな世界のなかで広がるさまざまな営みを、あらためて見つめ直す展覧会です。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2023年1月27日 ]

    ポーラ美術館「部屋のみる夢 ― ボナールからティルマンス、現代の作家まで」会場入口
    (左から)エドゥアール・ヴュイヤール《画家のアトリエ》1915年 ポーラ美術館 / エドゥアール・ヴュイヤール《服を脱ぐモデル、マルゼルブ大通り》1909年頃 ポーラ美術館
    ピエール・ボナール《地中海の庭》1917-1918年 ポーラ美術館
    草間彌生《蝶》2001年 個人蔵
    会場
    ポーラ美術館
    会期
    2023年1月28日(土)〜7月2日(日)
    開催中[あと34日]
    開館時間
    9:00~17:00(最終入館16:30)
    休館日
    会期中無休
    住所
    〒250-0631 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
    電話 0460-84-2111(代表)
    公式サイト https://www.polamuseum.or.jp/
    料金
    大人1,800円
    シニア割引(65歳以上)1,600円
    大学・高校生1,300円
    展覧会詳細 部屋のみる夢 ― ボナールからティルマンス、現代の作家まで 詳細情報
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