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    レポート
    特別展「恐竜図鑑 -失われた世界の想像/創造」
    上野の森美術館 | 東京都
    恐竜の展覧会なのに絵画?画家が描いてきた太古の姿を紹介する異色の企画
    太い尻尾を地面に付けて直立する肉食恐竜。以前は定番だった恐竜イメージ
    パレオアート(古生物美術)の巨匠の作品や漫画など。恐竜の表現史を辿る

    太古の昔に絶滅した恐竜。恐竜の「真の姿」をめぐる議論は、科学の進歩とともに更新を続けています。

    もちろん新たな発見は素晴らしい事ですが「昔のイメージと違う」と、ややしっくりこない人もいるのではないでしょうか。そんな「恐竜イメージの変遷」に注目したユニークな展覧会が、上野の森美術館で開催中です。


    上野の森美術館 特別展「恐竜図鑑 -失われた世界の想像/創造」会場外観
    上野の森美術館 特別展「恐竜図鑑 -失われた世界の想像/創造」会場外観


    展覧会は第1章「恐竜誕生 ― 黎明期の奇妙な怪物たち」から。18世紀に大きな進歩を遂げた自然科学。断片的な化石から絶滅した動物の姿を復元する方法論を、フランスの学者が確立し、古生物学も発展していきます。

    古生物の生態を復元した史上初の作品のひとつとされる版画が《ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)。魚竜イクチオサウルスが首長竜プレシオサウルスを捕食するシーンです。


    上野の森美術館 特別展「恐竜図鑑 -失われた世界の想像/創造」会場より ロバート・ファレン《ジュラ紀の海の生き物—ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)》1850年頃 ケンブリッジ大学セジウィック地球科学博物館
    ロバート・ファレン《ジュラ紀の海の生き物—ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)》1850年頃 ケンブリッジ大学セジウィック地球科学博物館


    1822年、イングランドの医師が、後にイグアノドンと命名する動物の骨を発見。前年に論文に記載されたメガロサウルスとともに、記念すべき最初の恐竜になりました。

    これらの発見以降、画家たちによって恐竜の生前の姿を再現する試みが進められます。魚食の魚竜が巨大な首長竜を食べているなど、明らかな誤りもありますが、奇妙な表現も魅力のひとつです。


    上野の森美術館 特別展「恐竜図鑑 -失われた世界の想像/創造」会場より (左から)ベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズ《ジュラ紀初期の海棲爬虫類》1876年 プリンストン大学地球科学部、ギヨー・ホール / ベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズ《ジュラ紀の生き物—ヨーロッパ》1877年 プリンストン大学地球科学部、ギヨー・ホール / ベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズ《白亜紀の生き物 —ニュージャージー》1877年 プリンストン大学地球科学部、ギヨー・ホール
    (左から)ベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズ《ジュラ紀初期の海棲爬虫類》1876年 プリンストン大学地球科学部、ギヨー・ホール / ベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズ《ジュラ紀の生き物—ヨーロッパ》1877年 プリンストン大学地球科学部、ギヨー・ホール / ベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズ《白亜紀の生き物 —ニュージャージー》1877年 プリンストン大学地球科学部、ギヨー・ホール


    展覧会の核といえるのが、第2章「古典的恐竜像の確立と大衆化」。1878年から80年にかけて、ベルギーで30体以上のイグアノドンの化石が発掘され、恐竜イメージは新しい時代に入りました。

    パレオアート(古生物美術)史上最大の巨匠とされるのが、チャールズ・R・ナイトです。恐竜をいきいきとした姿で描いたナイトの作品は、アメリカの博物館で使われたほか、1925年の映画「ロスト・ワールド」などにも影響を与えています。


    上野の森美術館 特別展「恐竜図鑑 -失われた世界の想像/創造」会場より チャールズ・R・ナイト《白亜紀—モンタナ》1928年 プリンストン大学
    チャールズ・R・ナイト《白亜紀—モンタナ》1928年 プリンストン大学


    ナイトよりも少し後の時代に活躍したズデニェク・ブリアンも、パレオアートの大家です。ヨーロッパ美術のリアリズムの伝統を踏まえ、国際的にも高く評価されました。

    ナイトやブリアンらの作品は日本の図鑑にも模写され、恐竜イメージが広まっていきました。それらの作品が持つ印象の強さゆえに、今の恐竜の姿に違和感を感じる人が多いのかもしれません。

    上野の森美術館 特別展「恐竜図鑑 -失われた世界の想像/創造」会場より (左から)ズデニェク・ブリアン《イグアノドン・ベルニサルテンシス》1950年 モラヴィア博物館、ブルノ / ズデニェク・ブリアン《タルボサウルス・バタール》1970年 モラヴィア博物館、ブルノ
    (左から)ズデニェク・ブリアン《イグアノドン・ベルニサルテンシス》1950年 モラヴィア博物館、ブルノ / ズデニェク・ブリアン《タルボサウルス・バタール》1970年 モラヴィア博物館、ブルノ


    続いて第3章は「日本の恐竜受容史」。19世紀に欧米で成立した恐竜のイメージは、世紀末には日本に入ってきました。「恐竜」という訳語は、古生物学者の横山又次郎が命名。以来、科学雑誌や啓蒙書、子供向けの漫画や絵物語、『地底旅行』や『失われた世界』など古典SFの翻訳など、恐竜を主題にした出版物が刊行されてきました。

    所十三は、恐竜をテーマに数々の漫画を制作しています。『DINO²(ディノ・ディノ)』は、所十三の代表作です。


    上野の森美術館 特別展「恐竜図鑑 -失われた世界の想像/創造」会場より 所十三『DINO²』漫画原稿 2002年 作家蔵
    所十三『DINO²』漫画原稿 2002年 作家蔵


    恐竜が持つ強い力のイメージ、また、儚く滅びていく運命などが画家を刺激するのでしょうか。ファインアートの分野でも、恐竜はしばしばモチーフになってきました。

    福沢一郎、立石紘一などが恐竜を自身の作品に取り込んでいます。


    上野の森美術館 特別展「恐竜図鑑 -失われた世界の想像/創造」会場より (左奥から)立石紘一《アラモのスフィンクス》1966年 東京都現代美術館 / 福沢一郎《爬虫類滅びる》1974年 富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館 / 福沢一郎《爬虫類はびこる》1974年 富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館
    (左奥から)立石紘一《アラモのスフィンクス》1966年 東京都現代美術館 / 福沢一郎《爬虫類滅びる》1974年 富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館 / 福沢一郎《爬虫類はびこる》1974年 富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館


    第4章は「科学的知見によるイメージの再構築」。1960年代から70年代にかけて、恐竜は従来考えられていた「鈍重な変温動物」ではなく「活発に動く恒温動物」だったという説が支配的になり、恐竜のイメージは大きく変わりました。

    「恐竜ルネサンス」と呼ばれるこの変革は、パレオアートの分野にも大きな刺激を与えました。新しい表現のアーティストが、次々と登場しています。


    上野の森美術館 特別展「恐竜図鑑 -失われた世界の想像/創造」会場より (左から)マーク・ハレット《縄張り争い》1986年 インディアナポリス子供博物館(ランツェンドルフ・コレクション) / マーク・ハレット《ディプロドクスの群れ》1991年 福井県立恐竜博物館
    (左から)マーク・ハレット《縄張り争い》1986年 インディアナポリス子供博物館(ランツェンドルフ・コレクション) / マーク・ハレット《ディプロドクスの群れ》1991年 福井県立恐竜博物館


    小田隆は、現代日本を代表するパレオアーティストです。抜群の技量を持ち、肉筆で圧倒的な迫真性を生み出しています。


    上野の森美術館 特別展「恐竜図鑑 -失われた世界の想像/創造」会場より 小田隆《篠山層群産動植物の生態環境復元画》2014年 丹波市立丹波竜化石工房
    小田隆《篠山層群産動植物の生態環境復元画》2014年 丹波市立丹波竜化石工房


    恐竜の展覧会といえば、化石や復元骨格が並ぶイメージですが、本展は基本的には絵画展(一部、立体作品もあります)。画家たちが想像力たっぷりに描いてきた太古の姿は、真実かフィクションかという枠を超えて見応えがあります。

    展覧会は兵庫県立美術館からの巡回展。東京展が最終会場です。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2023年5月30日 ]

    上野の森美術館 特別展「恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造」会場入口
    ジョン・マーティン《イグアノドンの国》1837年 ニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワ、ウェリントン
    ベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズ《白亜紀の生き物 ― ニュージャージー》1877年 プリンストン大学地球科学部、ギヨー・ホール
    (左から)ズデニェク・ブリアン《プテラノドン・インゲンス(海上の群れ)》1960年 モラヴィア博物館、ブルノ / ズデニェク・ブリアン《ティロサウルス・ディスペロルとエラスモサウルス・プラティウルス》1963年 モラヴィア博物館、ブルノ
    (左から)ニーヴ・パーカー《イグアノドン》1950年代 ロンドン自然史博物館 / ニーヴ・パーカー《ヒプシロフォドン》1950年代 ロンドン自然史博物館 / ニーヴ・パーカー《ティラノサウルス・レックス》1950年代 ロンドン自然史博物館
    徳川広和《シノサウロプテリクス》2022年 徳島県立博物館
    会場
    上野の森美術館
    会期
    2023年5月31日(水)〜7月22日(土)
    会期終了
    開館時間
    10:00 ~ 17:00(土日祝は 9:30 ~ 17:00)
    ※入場は閉館の 30 分前まで
    休館日
    会期中無休
    住所
    〒110-0007 東京都台東区上野公園1-2
    電話 ハローダイヤル 050-5541-8600( 全日 /9:00 ~ 20:00)
    公式サイト https://kyoryu-zukan.jp/
    料金
    一般 2,300円
    大学・専門学校生 1,600円
    高・中・小学生 1,000円
    ※未就学児は無料(高校生以上の付き添いが必要)
    展覧会詳細 特別展「恐竜図鑑 -失われた世界の想像/創造」 詳細情報
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