静嘉堂文庫美術館では「書物にみる海外交流の歴史」が開催されています。
2020年は東京オリンピックが開催され、海外から多くの人が集まります。
この機会に海外と日本の交流について、書物を通して振り返ってみるという展覧会です。
静嘉堂文庫美術館 絵葉書セット
美術鑑賞が趣味でも「書物」の展覧会は、苦手意識を持たれがちです。
どこをどう見たらよいのか、鑑賞のポイントを探ってみます。
鎖国時代も続いた海外交流
日本は四方を海に囲まれていますが、古来より他国との往来があり、様々な文化を受け入れてきました。
海外交流は、いつの時代も絶え間なく続いており、鎖国の時代でさえ、新知見が入ってきました。
鎖国と言われた時代に注目し、どんな知見を得ていたのか追ってみます。
世界を知っていた
『日本創製銅版新鐫 天球全図』のうち「地球図(部分)」 司馬江漢 江戸時代・寛政8年(1796)頃 静嘉堂文庫蔵 【全期間展示】
蘭学者の司馬江漢による、世界地図です。
「天球全図」では、太陽や月、地球などの天体が描かれています。
また、顕微鏡で見た雪の結晶、ボウフラ、蟻などの絵もあり、昆虫類は洋書の『昆虫学総論』を参考にしたと言われています。
海外の洋書の図を基に、最新の知見を銅版画で制作し彩色していました。
人体の解剖図を翻訳
『解体新書』杉田玄白(1733-1817)訳 中川淳庵(1739-86)等校 小田野直武(1749-80)画 江戸時代・安永3年(1774)刊
西洋解剖書『解体新書』です。
我が国初の本格的な解剖翻訳書で、原書はドイツの『解剖図表』のオランダ語訳。
図は、数種類の解剖図から引用され、小田野直武の手によって描かれました。
本文は全て漢文で、11回の書き直しを経て刊行されました。
「リンネの分類学」を知っていた
『泰西本草名疏』 伊藤圭介(1803-1901)江戸時代・文政12年(1829)刊 3冊
1829年、リンネの植物分類法を最も早く日本に紹介した本です。
生物学の世界では、分類学の父として著名なリンネです。
1700年代中頃に広まった分類法が1800年代初頭には、日本に入ってきました。
初めてリンネを紹介した本だと思うと重みが加わります。
原書では、リンネの分類法で配列したのに対し、初学者用の本書では、アルファベット順に配列しなおしました。
シーボルトの指導を受けているという点でも貴重な著作です。
『植学啓原』 宇田川榕庵 江戸時代・天保8年(1837) 静嘉堂文庫蔵 【全期間展示】
本格的植物学の紹介本として知られている《植学啓原》です。
この巻一にも、リンネの分類が使われ、植物の形態や働きについて記述されました。
記述にあたり、少なくとも5種類以上の洋書が利用されたと考えられています。
イソップ物語を和訳
『伊曽保物語』江戸時代・寛永16年(1639) 静嘉堂文庫蔵 【全期間展示】
誰もが知るイソップ物語。主人公伊曽保の伝記と教訓を主体とした短編寓話集。
16世紀後半、宣教師から伝わり、初めて和訳されました。
当初、キリスト教弾圧により広まりませんでしたが、江戸初期に刊行され、10種類以上の版が作られました。
鎖国というと、海外との交流を閉ざし、世界情勢に疎いと思われがちです。
しかし、活版印刷の普及もあり、書物を介して多くの知識を得ていました。
また、知識は特権階級が独占せず、庶民にも開放され、娯楽と捉える文化を育みました。
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