ソフィ・カル展

　 見知らぬ人々を自宅に招待して自分のベッドで寝てもらい、その様子を写真撮影する。あるいは偶然眼に入った男の後を追ってヴェネツィアまで出向き、尾行してその記録をつける。あるいはまた、自分の１日の行動を、母親を介して私立探偵に尾行させ、写真つき報告書の提出を求める…。 　 自らの執拗な好奇心に導かれ、驚くべき制作プロセスに則って実行された冒険の数々。フランス現代美術界の気鋭ソフィ・カルは、こうした個人的な体験をモティーフに、写真と文章で構成した独特の世界をうみだします。彼女が紡ぎだすスリリングな「物語」は、イメージと言葉が相互に作用し、真実と虚構のはざまへと見るものをいざないます。 　 常に自己と他者との相関関係によって成立するカルの作品は、その両者の深部に潜む“見えないもの”を鮮烈に浮かび上がらせていきます。生と芸術表現とのあいだに新たな関係を樹立しようとするカルの試み。それは、わたしたちの現実のさまざまな局面にたいして、思いもよらない省察をもたらしてくれることでしょう。 　 本展では、これまでの彼女の活動のエッセンスを鮮やかなかたちで示す２つのシリーズ「盲目の人々」「限局性激痛」を紹介します。