本展は、江戸時代末期の日本の開国の過程で、江戸幕府大老として重要な役割を果たした、彦根藩13代藩主井伊直弼(1815~1860)について紹介するものです。
安政元年(1854)に西洋諸国と日米和親条約などの条約を締結し、開国への第一歩を踏み出していた江戸幕府は、安政5年当時、アメリカ領事ハリスから通商条約締結を強く要求され、対外関係の大きな変更を迫られていました。しかし、天皇・朝廷の条約調印反対や、幕府の主導権をめぐる南紀派と一橋派との対立により、政治は大きく混乱していました。
この難局打開のため、幕府大老に起用されたのが井伊直弼でした。直弼は、日米通商条約通商条約など諸外国との通商条約を締結を進める一方で、一橋派の抑え込みをはかりましたが、天皇の許しなしに条約調印したことを敵対勢力から攻撃され、政治対立がさらに深まりました。その結果、「安政の大獄」での敵対勢力の弾圧がおこなわれ、ついには江戸城桜田門外での直弼暗殺に至り、幕府は崩壊への道を進んでゆくことになります。
本展示では、井伊直弼が開国にともなう幕府の政治的危機にどのように対処し、政治的決断を行わなければならなかったのか、その具体的な様子を紹介します。
国際社会に日本が組み込まれてゆくなか、時代に翻弄され、苦悩しつつも、懸命に自らの立場を貫こうと事態に立ち向かっていった一人の人間、井伊直弼にスポットを当てます。