この夏、財団法人 東京都歴史文化財団 東京都現代美術館と日本テレビ放送網株式会社は、企画展『ジブリの絵職人 男鹿和雄展』を開催いたします。
男鹿和雄は、アニメーションの美術という仕事において、その作品の舞台となる背景画を数多く描き続けてきました。
特にスタジオジブリ作品では、「となりのトトロ」(1988年)の美術監督として初めて映画作りに参加。昭和30年代の日本の澄んだ空気を鮮やかな色彩で表現し、かの名作を生み出す重要な役割を担いました。その後も、リアルに描かれた現代の風景とうつろいを活写した「平成狸合戦ぽんぽこ」、東北人ならではの感性でエミシの村や太古の森を描いた「もののけ姫」と、多くの作品に美術監督として携わり、そこに描かれる美しい景色は、数多くの名シーンを支えてきました。
木立の一本一本にまで及ぶ入念な観察と、緻密な中にも大胆な筆致が冴える卓越した技術で、光や気候の変化、四季の変化、空、雲、田園、草木や花といった自然の色彩豊かな表情を捉える男鹿和雄の背景美術。描かれた世界は、私たちが誰しも親しみ、憧れてきた風景ばかりです。
本展は、スタジオジブリ、および三鷹の森ジブリ美術館の全面協力を得て開催する、本格的な背景美術展です。これまで資料として保管され関係者以外は観ることができなかった背景画を中心に、作品点数500点以上というかつてない規模で一般公開するものです。ジブリ作品に携わる以前のテレビシリーズや劇場映画作品までさかのぼるなどアニメーションの仕事はもちろん、女優 吉永小百合による原爆詩朗読会「第二楽章」シリーズのために描いた挿画など現在に至るまで“絵職人”男鹿和雄の幅広い活動を一度に観ることができるまたとない機会です。
宮崎駿監督は、かつてアニメーション映画における美術の役割について、「映画の品格を決める決定的役割をもっている」と語りました。
今夏、東京都現代美術館に集まる、あの名シーンの数々。技術に裏付けられた、「本物」が語りかけるメッセージに、ぜひ心で触れて下さい。