からくり玩具といえば、精巧な江戸のからくり人形やゼンマイ仕掛けのディスプレイ・ドールなどが想い起されますが、本展でご紹介するのは、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、アメリカの各国から集まった、仕掛けもからくりも大変シンプルな玩具の色々です。
本展では、日本のからくり玩具の代表として「神戸人形」をとり上げます。「神戸人形」は、明治時代中頃に神戸で誕生したからくり人形です。台のの上の人形が手を動かし、首をふり、大きな口をあけて西瓜を食べたり、酒を飲んだり…。その滑稽な動きと繊細な仕掛けは、神戸っ子だけでなく、神戸を訪れる外国人観光客の人気をさらいました。実際、明治から昭和初期にかけて作られた神戸人形は、アメリカやヨーロッパの各地に多く残されています。明治時代のく神戸人形は、柘植(つげ)などの材料が使用され、木肌の美しさを強調した作品が多く、「お化け人形」あるいは「布引き人形」(観光地・布引きの滝で売られていたため)とも呼ばれていました。
昭和時代に入り、作品全体が黒い色で塗られるようになる頃には、「神戸人形」の名前が定着してきました。
神戸人形の作者として分かっているのは、初代の野口百鬼堂、二代目と目される出崎房松、昭和初期に神戸人形を有名にした小田太四郎、そして戦後、数百種に及ぶ神戸人形を精力的に製作した数岡雅敦です。十数年間は製作者もなく、廃絶状態となっていましたが、平成15年より日本玩具博物館では、「西瓜食い」や「酒のみ」などの復元製作を行い、次代につないでいく活動を始めました。