「気仙沼と、東日本大震災の記憶 ―リアス・アーク美術館 東日本大震災の記録と津波の災害史―」展を開催いたします。
気仙沼市と目黒区は、1996(平成8)年の「目黒のさんま祭」にさんまをご提供いただいたのをきっかけに交流が始まりました。災害時相互援助協定の締結や中学生の自然体験ツアーの実施などを経て、2010(平成22)年9月、ふたつの自治体は友好都市協定を結び、さらに絆を深めました。東北地方沿岸に甚大な被害をもたらした東日本大震災の半年前のことでした。
リアス・アーク美術館は、発災から2年が経った2013(平成25)年4月、常設展示「東日本大震災の記録と津波の災害史」を公開しました。これは、同館が中心となり、震災発生直後から行なった気仙沼市と南三陸町の被災状況の調査、記録活動を基にしたもので、撮影した被災現場写真 約30,000点、収集した被災物 約250点から厳選した資料群に、新聞や過去に起きた大津波に関する資料を加えた約500点で構成されています。
地域のミュージアムとして、現代美術の紹介とともに、歴史、民俗、生活文化を伝える資料の収集・展示にも力を入れてきたリアス・アーク美術館は、震災以前から「津波」を、地域の文化を築いてきた大切な要素の一つと捉え、過去の大津波を研究し、展覧会で取りあげてきました。こうした経験が結実したのが、東日本大震災の記録活動を、単に記録資料を残すことで終わらせるのではなく、正しく伝えていこうとするこの常設展示です。「被災現場写真」には場所と状況の説明を加え、「被災物」は生活の記憶の再生装置と捉え、単なる資料展示をこえた、説得力のあるインスタレーションとして構成されています。その後、震災発生後の二年間に得た様々な情報や、新たに見えてきた課題をテキストで表現した108つの「キーワードパネル」が加わり、鑑賞者に多くの情報を伝えるだけでなく、考える契機ともなる内容となっています。
本展は、「東日本大震災をいかに表現するか、地域の未来の為にどう活かしていくか」をテーマとするこの常設展示「東日本大震災の記録と津波の災害史」を、東京地区で初めて大規模に紹介するもので、被災現場と被災物の写真パネル約260点、被災物(現物)10点に関係歴史資料を加えて展覧いたします。そして、リアス・アーク美術館の特色あるもう一つの常設展示、地域の歴史・民俗資料をまとめた『方舟日記―海と山を生きるリアスなくらし―』をもとに、生活文化資料を特別展示し、気仙沼・南三陸地域が育んできた豊かな地域文化の一端もご紹介します。
被災地域の復興は、5年目を迎える今もまさに進行形で行われています。本展をつうじて、震災から2年目の時点でまとめられた記録を今日あらためて見直すことが、さまざまな物・事に想いを巡らせ、記憶を更新/形成しつつ、地域と世代を超えてともに考えていく一助となれば幸いです。
《リアス・アーク美術館について》
リアス・アーク美術館 (宮城県気仙沼市赤岩牧沢138-5 tel.0226-24-1611)
気仙沼湾を見おろす丘陵地に位置し、気仙沼市及び南三陸町で構成する行政事務組合が運営する美術館(1994年10月25日開館)。東北・北海道を一つのエリアと捉え、美術をはじめとする芸術・文化を継続的に調査、研究し、個性豊かな圏域文化を紹介する常設・企画事業を展開している。圏域に内在する文化資源を見つめなおす展覧会や教育普及の一連の活動は高く評価され、「地域のアーカイブとしての新境地を開拓した」として、「平成26年度 地域創造大賞(総務大臣賞)」を受賞。