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没後30年 鴨居玲展 踊り候え

■野球好きの素顔と、深すぎる闇
【会期終了】 深く、暗く、重い画面に、自らをなぞらえた人物。息苦しくなるほど陰鬱な作品を描いた鴨居玲(1928-1985)は、放浪を重ね、絶望感にとらわれた末に、57歳で自ら命を絶ちました。没後30年の記念展が、東京ステーションギャラリーで開催中です。
鴨居玲は1928年2月3日、金沢生まれ。出生については諸説がありますが、近年の研究でこの日が確実視されています。金沢美術工芸専門学校(現金沢美術工芸大学)で、宮本三郎に師事しました。

この時代の画家には共通しますが、鴨居も30代まではシュルレアリスムや抽象表現主義など、模索の時代が続きます。1965年に、37歳でブラジルへ。ここでメキシコ人画家ラファエル・コロネルの作品と出会った事で、自分のスタイルをつかみ始めます。

パリやローマにも滞在した後に帰国し、1969年に《静止した刻》で安井賞を受賞。この時、すでに41歳でした。


第1章「初期から安井賞受賞まで」

1971年にはスペインに渡った鴨居。現地の陽気な人々と親しく交わり、充実の日々を過ごしました。酔っ払いや老人、傷痍軍人など、社会の底辺にいる人々をモチーフにした作品は、後に鴨居の代表作となりました。

ただ、これらの作品も、鴨居は画中の人物と同じポーズを取って、鏡に映しながら制作するという独特のスタイルを取ったため、その作品はいずれも自画像ともいわれます。

普通の画家ならこの地でキャリアを重ねるところですが、鴨居は根っからのボヘミアンでした。当地に長く留まる事はなく、スペイン国内を転々。後にパリに移り住みます。各地で個展も開催し、その画業は順調のように思われましたが、なぜか鴨居の心は満たされず、1977年に帰国する事となります。


第2章「スペイン・パリ時代」

帰国後は神戸で制作を進めますが、スペインで出会ったような鴨居の創作意欲を刺激するモデルは、日本では見つかりませんでした。新たに裸婦像にも取り組みますが、途中で断念。もがき苦しむ鴨居が1982年の個展で発表したのが、《1982年 私》です。

中央には、真っ白いカンヴァスを前に、憔悴した鴨居。その廻りを、それまでに描いたモチーフが取り囲み、この先の画業に戸惑う鴨居の心情をそのまま投影したものです。

この作品の後、鴨居は自画像しか描かなくなります。睡眠薬とウイスキーをあおり、自殺未遂を重ねた末、1985年に自死。アトリエに遺された絶筆も、死神に取りつかれたような自画像でした。


第3章「帰国後の神戸時代」

会場最後にはデッサンが並びます。「手にデッサンのタコが出来ていないのは画家ではない」と語っていた鴨居。師である宮本三郎の教えを守り、日々のデッサンを怠りませんでした。

鴨居は油彩に取り組む際、抽象画のような下地を描いた後に、短時間で一気に描写していました。これも、事前のデッサンでイメージを確定させていたからこその技でした。

一方で、鴨居はデッサン「が」好まれる画家でもありました。あまりにも濃密な油彩画ではなく、いくぶん軽やかな表現のデッサンを好んで求める個人コレクターもいたのです。


第4章「デッサン」

作品の印象とその生涯から、鴨居自身はストイックな人物のように思われますが、実は大の野球好きという意外な一面もあります。学生時代からプレーを続けて明るい表情でバットを構える写真が残っており、「帰国したのは草野球がしたくなったから」という説まであります(ただ、このエピソードは鴨居のファンには不評です)。

「快活な野球好き」が描き続けた、闇のような絵。没後の記念展は5年ごとに開催されていますが、意外にも東京では25年ぶりの開催です。本展の後は北海道(北海道立函館美術館:7/26~9/6)、石川(石川県立美術館:9/12~10/25)、大阪(伊丹市立美術館:10/31~12/23)に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年6月9日 ]

鴨居玲 死を見つめる男鴨居玲 死を見つめる男

長谷川 智恵子 (著)

講談社
¥ 1,728


■鴨居玲展 踊り候え に関するツイート


 
会場東京ステーションギャラリー
開催期間2015年5月30日(土)~7月20日(月)
所在地 東京都千代田区丸の内1-9-1 JR東京駅 丸の内北口 改札前
TEL : 03-3212-2485
HP : http://www.ejrcf.or.jp/gallery/
展覧会詳細へ 没後30年 鴨居玲展 踊り候え 詳細情報
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