夏休みの科学系博物館では、しばしば恐竜の企画展が開催されますが、今年の科博はケタ違い。本展は恐竜よりずっと前までさかのぼり、生命誕生から現在まで進化の過程を辿る企画です。
会場はプロローグ「生命誕生」に続いて、第1章は「カンブリア大爆発」(5億4100万年前~4億4300万年前)。この時代に突然奇妙な生物たちが大量に出現し、現生生物の直接的な祖先がほとんどが出揃いました。
この章では、脊椎動物の祖先であるウナギのような《ピカイア》や、カナディアン・ロッキーの高地で見つかった「バージェス頁岩」から原始的な節足動物《アノマロカリス》など、貴重な実物化石も展示されています(ともに日本初公開です)。
第1章「カンブリア大爆発」第2章は「海から陸へ」(4億4300万年前~2億5200万年前)。水の中で生まれた生物は、次第に地上に進出していきます。
ダイナミックな復元模型は、ウミサソリを襲うダンクルオステウスです。ウミサソリは全長2.5mに達する史上最大の節足動物で、会場にはほぼ完全な標本としては世界最大級のウミサソリを展示。サメのようなダンクルオステウスは、体長が6~10mにも達すると考えられています。
他にも三葉虫やアンモナイト、そして現在の魚に近い種なども紹介されます。
第2章「海から陸へ」第3章は「哺乳類の出現と多様化」(2億9900万年前~3390万年前)。章の前半(ペルム紀)で紹介される大型の動物は、恐竜ではなく哺乳類の祖先である単弓類です。
ペルム紀末の2億5200万年前には、全生物種の90%以上が姿を消すという地球史上最大の絶滅事件が発生。その原因は地球科学最大級の謎とされています。
章の後半には恐竜も登場。触れる化石は人気を呼びそうです。
第3章「哺乳類の出現と多様化」第4章は「人類への道」(6600万年前~現代)。いよいよ私たちにつながります。
まず注目は《ダーウィニウス・マシラエ(通称イーダ)》。4700万年前の霊長類(現在のキツネザルの仲間)の化石ですが、胃の内容物まで残る保存状態の良さは、まさに奇跡的。今回が初来日となります。
会場後半は、人類進化の道すじについて。人類の進化は、かつて考えられていたような直線的かつ段階的では無かった事が分かってきました。復元模型で紹介されているのは、ネアンデルタール人。私たちホモ・サピエンスの直接の祖先ではありませんが、私たちのゲノムにも僅かですがネアンデルタール人のDNAが受け継がれています。
第4章「人類への道」ちなみに、地球上ではカンブリア紀から現在までの5億4100万年の間に、5回の大量絶滅事件が起きています(前述のペルム紀末は3回目)。最近は6600万年前の白亜紀末、小天体がメキシコに衝突して、高さ300mの巨大津波が発生しました。最近の異常気象とはレベルが違いますので、お間違いなく。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年7月6日 ]■生命大躍進 に関するツイート