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    レポート
    江戸の悪 PARTⅡ
    太田記念美術館 | 東京都
    悪を愛するわたしたち
    2015年6月に開催された「江戸の悪」展。特別展ではなく通常の企画展でしたが、通常企画展では過去最高の動員に。展覧会が終わってからも反響は続き、後から図録が一般書籍として発売されるなど、異例づくしの展開となりました。満を持して3年ぶりに復活、総数2.5倍のパワーアップ版です。
    (左から)月岡芳年《本朝義盗競》 / 歌川芳艶《御曹司牛若丸橘次兄弟にともなハれて密に奥州下向の刻濃州青墓の宿の於て強賊張範を討》
    (左から)松雪斎銀光《講談一席読切 松林亭伯円 鼠小僧次郎吉 尾上菊五郎》 / 東洲斎写楽《三代目坂田半五郎の藤川水右衛門》
    (左から)月岡芳年《英名二十八衆句 白井権八》個人蔵 / 歌川国貞《『比翼蝶春曽我菊』》個人蔵
    楊洲周延《彫画共進会之内 盛衰記西八條別館之図》
    (左から)落合芳幾《英名二十八衆句 鬼神於松》 / 歌川国芳《『新板越白浪』》個人蔵
    (左から)歌川国芳《本朝水滸伝 豪傑八百人一個 尾形周馬寛行》 / 歌川国貞(三代豊国)《『児雷也豪傑譚語』》
    豊原国周《明治座新狂言 摂州布引瀧之場》個人蔵
    歌川国貞(三代豊国)《『三幅対戯場彩色』》国立劇場蔵
    (左から)歌川広重《小倉百人一首 藤原基俊 亀屋忠兵衛 梅川孫右エ門》 / 歌川国貞《『義経千本桜』(椎の木)》個人蔵
    改めて「悪」に対する関心の高さが証明されたといえる前回展。今回も極悪非道の面々が、太田記念美術館に揃いました。

    会場は4章立てですが、1章「悪人大集合」がメイン。さらに1章は 1.盗賊、2.侠客、3.浪人、4.悪僧・悪の医者、5.悪の権力者・悪臣、6.悪女・女伊達、7.悪の妖術使いに分け、会場1~2階で紹介されます。

    2章「恋と悪」と3章「善と悪のはざま」が会場地下、4章「言葉としての悪」は2階です。

    冒頭の畳のコーナーは、章を超えたダイジェスト展示。歌川国芳《相馬の古内裏》は「がしゃどくろ」として知られますが、左にいる滝夜叉姫が悪人。妖術で骸骨を出し、国家転覆を目論むこの女は、平将門の娘とされる伝説の妖術使いです。


    会場 1階

    個性的な悪人は、庶民の娯楽だった歌舞伎に欠かせない存在でした。悪役の役者絵を見ると、主役と対峙する構成だけでなく、悪役だけを描いた役者絵も数多く作られているなど、人々は悪を求めていた事が分かります。

    「悪役の役者絵」という事なら、ぜひ覚えていただきたいのが、五代目松本幸四郎。目つきが鋭くて鼻が高く「鼻高幸四郎」と呼ばれた五代目幸四郎は、悪役を演じれば天下一品。多くの浮世絵師が、その個性的な風貌を描きました。

    「言葉としての悪」では、善と悪の戦いなど。心の中で善と悪が争うという表現は、現代のマンガやアニメなどでもしばしば見られます。後期展示では、悪玉が主人公を吉原まで連れていく作品も。いつの時代も、男は色街に弱いものです。


    会場 2階

    「恋と悪」の代表格は、八百屋お七。火事の避難先で出会った小姓と恋仲になり、もう一度会いたいと願うあまり放火の大罪を犯し、火炙りの刑に。悲しい悪女といえるでしょう。

    侮辱を受け続けた善人が、我慢の限界を超えて殺人鬼になるのも、歌舞伎にしばしば見られるパターン。逆に、悪人が最期に善行をして死んでいく例もあります。善と悪は対立構造ではなく、表裏一体の関係にあります。


    会場 地下

    現在でも某大臣、某理財局長、某大学の監督など、「悪」とされた人がテレビや週刊誌には次々に登場します。悪が絶えないのではなく、悪を求める心が絶えないのかもしれません。

    展覧会の関連事業として、太田記念美術館をはじめとした都内7施設で「悪」をテーマにした展覧会やイベントが開催されています(東洋文庫ミュージアム、國學院大學博物館、ヴァニラ画廊、国立劇場伝統芸能情報館、国立演芸場演芸資料展示室、銀座 蔦屋書店)。相互割引もありますので、詳細は公式サイトでご確認ください。

    ※展覧会は前後期で全点が展示替えされます。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年6月1日 ]

    江戸の悪江戸の悪

    渡邉晃 (著)

    青幻舎
    ¥ 1,620


    ■江戸の悪 PARTⅡ に関するツイート


     
    会場
    会期
    2018年6月2日(土)~7月29日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:30~17:30(入館17:00まで)
    休館日
    月曜日(ただし7月16日(月・祝)は開館)、6月28日(木)、6月29日(金)、7月17日(火)
    住所
    東京都渋谷区神宮前1-10-10
    電話 03-5777-8600
    公式サイト http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/special/2018/edonoaku/
    料金
    一般 1,000円/高大生 700円/中学生以下 無料

    ※10以上の団体は1名あたり100円引き
    展覧会詳細 「江戸の悪 PARTⅡ」 詳細情報
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