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    レポート
    「ソフィ カル ― 限局性激痛」原美術館コレクションより
    原美術館 | 東京都
    女の恨みつらみ、チクチクと
    フランス人女性現代美術作家・ソフィ カル(1953-)の「限局性激痛」は、日本への滞在がきっかけで誕生した作品。19年前、日本初の個展が原美術館で開催され、大きな反響を呼びました。残念ながら2020年12月に閉館する事が発表された同館で「限局性激痛」を展覧できる、最後のチャンスです。
    「ソフィ カル—限局性激痛」原美術館コレクションより 展示風景 © Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018
    「ソフィ カル—限局性激痛」原美術館コレクションより 展示風景 © Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018
    「ソフィ カル—限局性激痛」原美術館コレクションより 展示風景 © Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018
    「ソフィ カル—限局性激痛」原美術館コレクションより 展示風景 © Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018
    「ソフィ カル—限局性激痛」原美術館コレクションより 展示風景 © Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018
    「ソフィ カル—限局性激痛」原美術館コレクションより 展示風景 © Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018
    「ソフィ カル—限局性激痛」原美術館コレクションより 展示風景 © Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018
    「ソフィ カル—限局性激痛」原美術館コレクションより 展示風景 © Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018
    「ソフィ カル—限局性激痛」原美術館コレクションより 展示風景 © Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018

    世界的に注目を集めているソフィ カル。写真と言葉で構成した物語性の高い作品で知られています。原美術館では、「限局性激痛」(1999-2000)に続き、「最後のとき/最初のとき」(2013)と、個展が2度開催されました。


    目を惹くタイトル「限局性激痛」とは、身体部位を襲う限局性(狭い範囲)の鋭い痛みや苦しみを意味する医学用語です。カル自身の失恋体験による痛みとその治癒を、写真と文章などで作品化。人間味あふれる作品は、かつての事業家・原邦造の邸宅だった同館にぴったりです。


    会場は二部構成。カルは日本に三か月滞在できる奨学金を得て、1984年10月25日にシベリア鉄道で日本へ出発。92日後のフランス帰国まで、カル自身が思ってもみなかった、人生最悪の日へのカウントダウンが始まります。


    第一部では、その出来事を最愛の人への手紙や写真で綴った作品を展示。写真の上に捺された「92 DAY TO UNHAPPINESS」の数字が、徐々に小さくなるにつれ、写真が美しく、楽しいものへと変化していく様子が不気味です。


    正直ゾッとするのが、搭乗前に手にしたメッセージカード、その上に捺された「1 DAY TO UNHAPPINESS」の文字。ここから第二部へ続くのかと思うと、長くもない館内の階段を上る足が重くなりますが、続きを見に行きましょう。



    続く第二部は、写真と刺繍で綴った作品。自らに起こった不幸を他人に語り、代わりに相手の辛い経験を聞くことで、自身の心を癒していく様子を作品にしました。カルの言葉がグレー地の布に。彼女の友人や、知人の言葉が、白地の布に刺繍されています。


    カルの言葉が綴られているグレー地の布に注目すると、言葉を綴る糸の色が徐々に濃くなっています。最後は、その言葉が忘れ去られたように、布と言葉が同化。不幸な出来事を他人に話したことで、自身の傷が癒えたことを表しています。


    取材前のカルのイメージは、失恋がつらく、めそめそと泣く女性でしたが、とんでもない! 展示されていた作品から見えるカルは、そんな可愛らしい乙女ではありませんでした。女性はもちろん、ぜひ、男性にも見てほしい展覧会です。


    2月1日(金)に、カルが来館するトークイベントが開催されます。館長によると、歳を重ね20年前の「限局性激痛」の頃よりは性格は穏やかになったのではとのこと。詳細は決まり次第、公式サイトで発表されます。


    個展も都内2か所で開催されています。ギャラリー小柳「ソフィ カル《Parce Que》(なぜなら)」(会期:2/2~3/5)、ペロタン東京「ソフィ カル《Ma mére,chat,mon pére,dans cet ordre.》(私の母、私の猫、私の父、この順に。)」(会期:2/2~3/11)。ギャラリー小柳では、新作を発表も発表されます。性格は丸くなっても、作品の尖りは健在との事です。ぜひ、本展と合わせて、ソフィ カルの世界をご覧ください。


    [ 取材・撮影・文:静居絵里菜 / 2019年1月8日 ]


    フランス人がときめいた日本の美術館フランス人がときめいた日本の美術館

    ソフィー・リチャード(著),山本 やよい(翻訳)

    集英社インターナショナル
    ¥ 2,376

    会場
    会期
    2019年1月5日(土)~3月28日(木)
    会期終了
    開館時間
    ※予約制。詳細は公式サイトへ。
    休館日
    月曜日(祝日の場合は開館し翌平日休館)
    住所
    東京都品川区北品川4-7-25
    電話 03-3445-0651
    公式サイト https://www.haramuseum.or.jp/
    料金
    一般 1,100円 / 大高生 700円 / 小中生 500円 / 原美術館メンバー 無料

    ※学期中の土曜日は小中高生無料、20名以上の団体は1人100円引き
    ※年齢を確認できる書類のご提示により、70歳以上550円
    ※身障者手帳のご提示により、ご本人は半額、介助者1人無料
    ※カフェ、ショップのみのご利用にも入館料が必要です。
    展覧会詳細 「ソフィ カル ― 限局性激痛」原美術館コレクションより 詳細情報
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