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    停滞フィールド 2020→2021
    トーキョーアーツアンドスペース本郷 | 東京都

    昨年の「ACT Vol. 2『停滞フィールド』」は、新型コロナウイルスの影響を受け、開幕1週で休止したまま閉幕を迎えました。その展覧会が再び、トーキョーアーツアンドスペース本郷で2月20日(土)から3月21日(日)まで開催されています。

    参加作家は、昨年と同じく田中秀介、広瀬菜々&永谷一馬、渡辺豪の3組です。

    この1年間は、世界規模であらゆることが停滞しました。これまで通りに物事が運ばず、流れは止まりました。この展覧会では、1年前の展示から停滞を経て、作家さんの中で変わった事を感じ取る事ができます。


    トーキョーアーツアンドスペース本郷の3階建ての造りに合わせて、フロアごとに作家さんの空間が区切られて作品が展示されています。 そして、2階のラウンジでは椅子で寛ぎながら、3組の作家さんの作品ファイルをゆっくり眺めることが出来ます。


    1階には、広瀬菜々&永谷一馬さんの作品が展示されています。 白く長いテーブルに白い陶器がたくさん並んでいます。 野菜や菓子、そして見慣れた様々な形の容器が並んでいます。


    広瀬菜々&永谷一馬《Still Life》2013年からの継続作品


    実物大の鋳型を使い、成形されていますが、どの作品も溶けるように変形しています。 1つ1つが違う形をしています。

    これは陶器を焼く時の熱の影響で変形するように仕込まれた素材が使われているからだそうです。



     

    窓からの自然光と照明の色の違いで、同じ素材からできた同じ白が違って見えました。



     

    2階の渡辺豪さんの展示は、2作品です。 1つの展示室の入り口には分厚い真っ黒のカーテンがついています。恐る恐る足を踏み入れると巨大スクリーンに高精細で作品の箱が映し出されていました。

    スローモーションでじわっと動く箱に押し寄せられように部屋の奥へ進むと、スクリーンの後ろにもう1つ巨大スクリーンが設置されていました。スクリーンが大きくてカメラに収まらない大きさです。



    渡辺豪《自分の成分》2020 アニメーション(ダブルチャンネル)33’49”


    もう1つの展示室には、1年前の展覧会と今回の展覧会を繋ぐ「窓」が作品として映し出されていました。

    同じ展覧会が同じ場所で開催されるけれど、新型コロナの影響で1年という時間によって2つに分断されて、2つの展覧会になったことが示されていました。



    渡辺豪《停滞フィールド》2020-2021 アニメーション 30’


    3階の田中秀介さんの展示室では、田中さんご本人に直接お話を伺う事ができました。 展示された18点の油絵は2020年から2021年に描かれた新作ばかりです。

    この1年間が新型コロナの影響で、何がどう変わったのかを偶然その時に震えた筆致なども含めて、描く事によってご自身で確かめるそうです。

    こうして確かめながら描かれた絵からは、大きく鮮やかな部分に田中さんの確認したかった要素が描き出され、共感へと導かれました。



    田中秀介《そっぽ役》2021


    1年前の展覧会で《横風情》が展示された場所には、その《横風情》をNHKが撮影した場面が描かれた《一部始終中》が今年は展示されています。

    この1年間で、田中さんご自身の中で、時間の捉え方が大きく変化したことを伺いました。 それは「絵の持つ時間」は個人の時間とは違うということです。

    その例として、次の展覧会に向けて描いていた1年前と比べ、今は次の展覧会が突然なくなるかもしれないという状況を考えると、次の展覧会のためだけではなく、絵にもこの先ずっと続く「絵の持つ時間」があるということに気がついたということをお話し頂きました。



    田中秀介《一部始終中》2021


    《独立発破》は、昨年展示した扉のガラスにマスキングテープを貼った《化門》を受けて描き、1年前と同じ展示室に展示されています。

    《独立発破》には、割れた鏡が描かれています。 割れた鏡は、もはやちゃんと映すことは出来ません。 それでも、割れたそのもの自体が独立して存在していることを示しているそうです。



    田中秀介《独立発破》2021


    《凡々揚々》は、ちょうど一年前に緊急事態宣言が発令され、外出自粛期間を経て久しぶりに外出した時に、バラの花が目に飛び込んで来た時の色の鮮やかさに心が動かされて描いた作品で、「これまでになく花を求めていた」という言葉に共感しました。

    絵は、サイズを大きくしたり、小さくしたり調整できます。 そして、色合いの加減もできるので、絵を描くことでご自身の意図を指し示しているそうです。それでも、この時見たバラは、もっと鮮やかだったと、田中さんの心から出てきた言葉に日常の些細な変化も繊細に感じ取る柔らかさを感じました。



    田中秀介《凡々揚々》2021


    《只中のしらしめ》は、行きつけの喫茶店の壁に貼られていた手書きの定休日のお知らせを描いたものです。

    毎月のこのお知らせの文字の筆致が気になり、思い立って描いてみたそうです。 定休日のお知らせが田中さんの絵として新たに誕生する面白さと、描くことで確認するという納得感のある気持ち良さが描き出されていました。



    田中秀介《只中のしらしめ》2020


    水道橋駅からトーキョーアーツアンドスペース本郷へ向かって外堀沿いに歩く道すがら、満開を迎えた河津桜がちらほら目に入ってきました(2月20日時点)。

    まだ蕾の硬い大きな桜の樹が外堀沿いにたくさんありました。 トーキョーアーツアンドスペース本郷は、お子様もご入場頂けますので、お花見も兼ねて親子で芸術鑑賞はいかがでしょうか。




    [ 取材・撮影・文:法乙 / 2020年2月20日 ]


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    会場
    トーキョーアーツアンドスペース本郷
    会期
    2021年2月20日(土)〜3月21日(日)
    会期終了
    開館時間
    11:00 - 19:00
    休館日
    2/22、3/1、3/8、3/15
    住所
    〒113-0033 東京都文京区本郷2-4-16
    電話 03-5689-5331
    公式サイト https://www.tokyoartsandspace.jp/
    料金
    無料
    展覧会詳細 停滞フィールド 2020→2021 詳細情報
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