鳥がさえずり花木の蕾膨らむ早春、滋賀信楽の山の中、名館MIHO MUSEUMも2021年の目覚めの時となりました。
春季特別展『MIHO MUSEUMの現代美術』が始まりました。これまでほとんど公開されたことがなかったMIHO MUSEUM創立者・小山美秀子が収集した現代美術を紹介する特別展です。

今回の展覧会
白山松哉、岸田劉生、バーナード・リーチ、須田剋太、杉本健𠮷、芹沢銈介、河井寛次郎、黒田辰秋、棟方志功など名だたる芸術の先駆者。
更にMIHO MUSEUM設立母体の神慈秀明会の神苑建設に携わったミノル・ヤマサキ、I.M.ペイ、若林奮の作品も紹介されています。

レセプション棟と美術館棟を結ぶシャトルもワクワク感あり

216mのトンネルはアートへの誘い

どこか古民家風な美術館棟
山を縫うようにくねくねと車を走らせ到着するMIHO MUSEUM。まずはレセプション棟から電気自動車に乗るか徒歩で神秘的なミュージアムトンネルを抜けると正面にはちょっと古民家風な建物がみえます。美術館棟です。
建築設計は、パリルーヴル美術館のガラスのピラミッドを設計したI.M.ペイによるもので、ミシュラン三ツ星 “必ず訪れるべき場所”です。
では特別展へ・・川島織物セルコン織製の《MIHO悲母観音》に見守られながら第一の部屋で私の目はバーナード・リーチの《燕図》に吸い寄せられました。

《燕図》バーナード・リーチ
先日読んだ小説を思い出しながら英国からの使者がみた日本を想像してみました。続いては須田剋太と杉本健𠮷による作品列。東大寺観音院をアトリエにした二人の画家の作品からは戦中戦後を生き抜いた力強さを感じます。
極太ではみ出さんばかりの書、自由奔放な色彩の須田作品と奈良を愛し優しさを少しおどけたセンスで仕上げる杉本作品を堪能できます。

ダイナミックな八曲一双 《扇面散屏風》(部分)杉本健𠮷

よく見れば 楽しそうでモダン

奈良愛があふれてる
驚きの《扇面散屏風》は八曲一双で展示室の端から端までぴったり納まっています。扇面をよくみるとなんだかモダンなものやカワイイものがたくさん!奈良愛溢れるデザインです。
さて次は私の大好きな芹沢銈介の作品です。柳宗悦を師と仰ぎ日本民藝協会の主要メンバーで「型絵染」の人間国宝。沖縄紅型の手法を学び、唯一無二のデザイン表現は鮮やかに目に焼き付くものばかりです。

おなじみのモチーフは華やかで艶やか 《春夏秋冬文二曲屏風》芹沢銈介

大切にしたいひらがな文字 《いろは文二曲屏風》芹沢銈介
次の空間は宗教施設神苑(みその)に関するもの。彫刻家若林奮による「森」が出現しました。なんと鉛筆書きの大作です。施設の庭園に携わり、やわらかな色のスケッチも印象的です。

森が出現 《多くの川を渡り 再び森の中へ》 若林奮
そして締めくくりは1997年11月3日、グランドオープン時の初代館長を務めた梅原猛の作品。文明、思想、日本学と大きな視点で日本を追求した館長の「書」は、やはり宇宙的でした。

哲学的自由な思想 《キャベツが空を飛ぶ》 初代館長 梅原猛(書)、三浦景生(画)
企画特別展とあわせて古代美術、仏教美術などの所蔵名宝も公開され、オリエント世界と静かに向き合うことができます。

常設の古代エジプト・オリエント関連展示も秀逸《隼頭神像》
コレクションは人柄と人脈により集まるもの。そして人との交流により生まれた「MIHO MUSEUM自身の歴史を語る展覧会」と私は感じました。いつも思う・・なぜこんな山の中に美術館?そう思いながらも繰り返し訪問してきたMIHO MUSEUM。ちょっと疲れた時、行きたくなる場所です。

広々とした館内を企画展室へ向かう

ミュージアムショップのお洒落なコレクション

自然農法の恵みをいただける「おむすび膳」
今回の展覧会は日時指定の事前予約制の開催です。また、開館時間や休館日にも注意が必要です。レストラン、喫茶、ミュージアムショップも変則的営業のようです。館内ではランチも可能です。自然農法で育てた食材の「おむすび膳」はいかがでしょう。木々が風にゆれ、雨に濡れ、陽ざしを浴びる窓からの風景を見ながら過ごす贅沢な1日。
通常なら大人気の枝垂れ桜の並木が出現する頃の鑑賞予約は一段と至難かもしれませんが、特別な時間を手に入れてお出かけするチャンスです。
[ 取材・撮影・文:ひろりん / 2021年3月12日 ]
読者レポーター募集中!あなたの目線でミュージアムや展覧会をレポートしてみませんか?