IM
レポート
奈義町現代美術館(NagiMOCA / ナギ・モカ)
アートと建物が一体化、世界的建築家の磯崎新が手がけたユニークな美術館
3つの展示室に、荒川修作+マドリン・ギンズ、岡崎和郎、宮脇愛子の作品
荒川+ギンズの作品は、円筒状の展示室に石庭。自己意識と身体感覚のズレ

岡山県勝田郡奈義(なぎ)町。岡山県と鳥取県の境、中国山地に位置するこの町に、作品と建物が一体化したユニークな美術館があるのはご存じでしょうか。

1994年に開館した、奈義町現代美術館(通称 NagiMOCA / ナギ・モカ)です。



奈義町現代美術館


美術館を設計したのは「建築界のノーベル賞」と称されるプリツカー賞を受賞している、世界的建築家の磯崎新。

建物には奈義町立図書館も併設されており、エントランスから入って右手が美術館、左手が図書館になります。



奈義町現代美術館・図書館


美術館は「太陽」「月」「大地」と名付けられた3つの展示室から構成され、それぞれが自然条件に基づいた固有の軸線を持っています。

「太陽」の軸は南北軸、「月」の平坦な壁は中秋の名月の午後10時の方向を指し、「大地」の中心軸は秀峰那岐山の山頂に向かっています。



外から見ても存在感がある「太陽」の展示室


では、常設展示作品をひとつずつご紹介しましょう。

「大地」は、宮脇愛子。ステンレスのワイヤーからなる、弧が連なる作品です。

手前の中庭は水盤、奥の梁壁で枠取られた室内には黒い石が敷き詰められ、ステンレスの弧は異なった表情を見せます。



宮脇愛子《うつろひ-a moment of movement》


続いて「月」は、三日月のかたちの大きな部屋。岡崎和郎が手がけました。

壁面には黄金色の「HISASHI」。原型はテーブルの端に垂らした石膏で、その形態は10分ほどで固まった偶然の産物です。

長い石のベンチは、岡山産の御影石製です。



岡崎和郎《HISASHI-補遺するもの》


最後は「太陽」。荒川修作+マドリン・ギンズによる作品で、最も注目度が高い作品といえるでしょう。

展示室に入るには、手前の黄色い壁面の小部屋から。斜めの黒い円柱は中が螺旋階段になっていて、ここを上って展示室に向かいます。



「太陽前室」


階段を上り切った先は、円筒状の展示室。左右には京都の龍安寺を模した石庭が、部屋の中心軸を対称にして、対に置かれています。

展示室は真南を向いているので、前方から光が差し込みます。渦巻きのようなシルエットに見えるのは、龍安寺の土塀と屋根の部分です。



荒川修作+マドリン・ギンズ《遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体》


先まで進んで反対側を見ると、床面にはベンチ、シーソー、鉄棒がある事も目に入ってきます。ベンチやシーソーも対になるように上部にも設置されていますが、実は上部のものは大きさが1.5倍になっています。

展示室が円筒状であるのに加え、展示室そのものが南に向かって上がっている事もあり、空間全体が極めて不安定です。



荒川修作+マドリン・ギンズ《遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体》


ベンチやシーソー、鉄棒は、座ったり使ったりすることも可能。遊びながら展示室にしばらく身を委ねてみると、自己意識と身体感覚のバランスが崩れてくる気がしてきます。

この感覚こそが、荒川+ギンズならではの作品世界。世界的な現代アートの作品を、常設で身近に楽しむことができる奈義町の人が、羨ましく思えます。



荒川修作+マドリン・ギンズ《遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体》


併設されたギャラリースペースでは、現代美術の企画展も開催されます。県内若手作家やベテラン作家など、さまざまなアーティストを年間10本程度の展覧会で紹介しています。

アートファンなら一度はチェックしておきたい美術館ですが、冬の奈義町は積雪も珍しくありません。お出かけ前に公式サイトでご確認ください。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2021年12月2日 ]

© 1994 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.

喫茶室から臨む、宮脇愛子《うつろひ-a moment of movement》
荒川修作+マドリン・ギンズ《遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体》
岡崎和郎《HISASHI-補遺するもの》
荒川修作のドローイング
おすすめレポート
ニュース
ご招待券プレゼント
学芸員募集
展覧会ランキング
おすすめコンテンツ