1996年に84歳で没した岡本太郎の遺志を継ぎ、「時代を創造する者は誰か」を問うために設けられた「岡本太郎現代芸術賞」(通称「TARO賞」)。今年で、ちょうど25回目をむかえました。
今回は578点の応募から24名(組)が入選。それらの作品を紹介する第25回岡本太郎現代芸術賞展を見に、川崎市岡本太郎美術館に行ってきました。

「第25回岡本太郎現代芸術賞」展 会場
今回、大賞にあたる岡本太郎賞に輝いたのは、吉元れい花さんの《The thread is Eros, It’s love!》です。
写真で見ると絵画のように見えますが、実は全て刺繍。大小さまざまの作品を組み合わせて、ひとつの大きな世界を作っています。

吉元れい花《The thread is Eros, It’s love!》

吉元れい花《The thread is Eros, It’s love!》
岡本敏子賞は、三塚新司さんの《Slapstick》。巨大なバナナの皮の造形物です。スラップスティックは「どたばた喜劇」のことなので、バナナの皮を踏んで滑るイメージでしょうか。
何でできているのかと思っていましたが、エアーで膨らませたバルーン。やや黒ずんで痛んだ感じが面白いと思いました。来場していた小さな子どもたちが、大喜びしていました。

三塚新司《Slapstick》

三塚新司《Slapstick》
特別賞には4点が選ばれましたが、強い存在感を放っていたのが、村上力さんの《異形の森》。手前に林立している人物像は等身大で、すっと立っているだけなのですが、妙にリアリティがあります。
他の作品を見ている時に、視線が気になって、バッと振り返るとこの作品だった、というのを、2回も繰り返してしまいました。

村上力《異形の森》

村上力《異形の森》
その他の入選作品では、角文平さんの《Fountain》が印象に残りました。JPN、CHNなど5カ国を示すドラム缶の上にあるのは、チョコレート・ファウンテンのようですが、流れているのは油。化石燃料を消費し続ける現状を揶揄しているのでしょうか。

角文平《Fountain》
広大な生田緑地の中にある川崎市岡本太郎美術館。岡本太郎からの作品寄贈をきっかけに計画が立ち上がり、1999年に開館しました。
常設展示室も独特の演出空間で、美術館全体で岡本太郎を体感できるユニークな美術館です。

川崎市岡本太郎美術館 常設展示

川崎市岡本太郎美術館 常設展示

川崎市岡本太郎美術館 常設展示
今年は大阪、東京、愛知と巡回する大規模な展覧会も開催される岡本太郎。没後四半世紀を過ぎても、さらに注目度が高まっているように思います。
生前の活動をご存じのシニア以上の方も、あまり良く知らない若い方も。大規模展の予習もかねて、ぜひ足を運んでみてください。
[ 取材・撮影・文:M.F. / 2022年2月22日 ]
■常設展「岡本太郎と夜―透明な渾沌」 2022年1月20日(木)~5月8日(日)
■企画展「第25回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」 2022年2月19日(土)~5月15日(日)
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