文化庁が若手芸術家を支援する「新進芸術家海外研修制度(在研)」の成果発表の場である「DOMANI・明日展」。毎年恒例の展覧会ですが、コロナ禍もあって国立新美術館での開催は2年ぶりになります。
サブタイトルは「百年まえから、百年あとへ」。1923年の関東大震災から100年目となる年に東京で開かれる企画として、「ゆれる/ゆらぐ地面、制度、価値観」という視点で命名されました。

国立新美術館 乃木坂駅側からのアプローチ
今回の出展作家は10名。早速、目についた作品をご紹介していきましょう。
近藤聡乃(1980-)は2008年度にアメリカ(ニューヨーク)で研修。近藤は2010年度に国立新美術館で開催された「第13回DOMANI・明日展」にも出展しており、初の同館2度目の参加になります。
アニメーション、ドローイング、マンガなど多彩な分野で活躍。近年では「ブルーピリオド展〜アートって、才能か?~」にも出展していました。

近藤聡乃
今回のメインビジュアルは、石塚元太良(1977-)。石塚は東京都生まれ。写真家として2010年度にニューヨーク、2021年度にはフィンランドで研修しています。
氷河をモチーフに、印画紙を多層に編み込んだモザイク状の作品《Texture》は、写真の平面性に挑んでいるようです。

石塚元太良
伊藤誠(1955-)は、愛知県生まれで、今回の最年長作家。1996年度にアイルランドで研修。FRP(繊維強化プラスティック)やゴム、ステンレスなどで、不思議でユーモラスな空間を作りだします。
本展では、これまでに国立新美術館で開催された「DOMANI・明日展」で本格的に取り上げることができていなかったキャリア豊かな作家3名も取り上げられており、伊藤もそのひとりです。

伊藤誠
北川太郎(1976-)は、兵庫県生まれ。2007年度にクスコ(ペルー)で研修。いろいろなかたちの石の作品が並びますが、北川は徹底して手仕事にこだわり、のみと石頭(せっとう)を使って、長い時間をかけて制作しています。
展示されている石の彫刻作品は、すべて手で触れて鑑賞することが可能。触ると痛そうにも思えた作品が、意外なほど手になじんだりと、目による鑑賞に触覚を加える事で、印象が大きく変わります。

北川太郎
会場の最後は小金沢健人(1974-)。東京都生まれで、2001年度にベルリン(ドイツ)で研修。学生時代からビデオによる映像作品の発表を始め、ドローイング、パフォーマンス、インスタレーションなどの要素が混在する、複合的な表現活動を進めています。
本展では、紙にドローイングが描かれる模様を映像作品として紹介。重なった紙が、ずれていき、描いたものが突然離れたり、また重なったりと、予想外の動きで進みます。

小金沢健人
24回展は東京で開催されなかったため取材できませんでしたが、この項では2013年の15回展から紹介している「DOMANI・明日展」(15th 2013、17th 2015、18th 2016、19th 2017、20th 2018、21th 2019、22th 2020、23th 2021)。さまざまなジャンルの作品が揃い、日本におけるアートシーンの現在地を確認する上でも、とても有意義な展覧会です。
おすすめポイントとして、比較的、入場料が安価なことも記しておきます(一般 1,000円など)。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2022年11月18日 ]