アイスランド系デンマーク人アーティスト、オラファー・エリアソン(1967-)。1990年代初めから写真、彫刻、ドローイング、インスタレーション、デザイン、建築など、多岐にわたる表現活動を展開しています。日本では、金沢21世紀美術館の館外にある色ガラスの作品《カラー・アクティヴィティ・ハウス》をご存じの方がいるかもしれません。
今回の展覧会は、その金沢21世紀美術館での「オラファー・エリアソン - あなたが出会うとき」展(2009-2010年)以来、日本では10年ぶりとなる大規模展。代表作をはじめ、多くが国内初公開の作品で構成されています。
冒頭は3点の絵画から。パステルトーンの明るい抽象画に見えますが、この水彩画はグリーンランドの氷河の氷で制作されました。幼少期にアイスランドで多くの時間を過ごしたエリアソンは、氷河をしばしば表現に取り入れています。

(左から)オラファー・エリアソン《あなたの移ろう氷河の形態学(過去)》2019年 / 《メタンの問題》2019年 / 《あなたの移ろう氷河の形態学(未来)》2019年 Courtesy of the artist; neugerriemschneider, Berlin; Tanya Bonakdar Gallery, New York / Los Angeles © 2020 Olafur Eliasson
《太陽の中心への探査》は、カラーエフェクトフィルターガラスを使った立体作品。光源がゆっくりと回転する事で、展示室内は幻想的な光に包まれます。作品の光と動きは、美術館の外部(サンクンガーデン)に設置されたソーラーパネルから電力を得て実現。環境への配慮は、エリアソンによる表現のベースになっています。

オラファー・エリアソン《太陽の中心への探査》2017年 Courtesy of the artist and PKM Gallery, Seoul © 2017 Olafur Eliasson
《あなたに今起きていること、起きたこと、これから起きること》は、光を使った作品です。白い壁に向かって色付きの光が照射されており、来場者が壁の前に立つと、さまざまな色の影が壁に映ります。来場者は自然と壁に向かってポーズを取る事になります。

オラファー・エリアソン《あなたに今起きていること、起きたこと、これから起きること》2020年 Courtesy of the artist; neugerriemschneider, Berlin; Tanya Bonakdar Gallery, New York / Los Angeles © 2020 Olafur Eliasson
《サンライト・グラフィティ》は、参加型の作品です。2名1組で「リトルサン」から発せられるライトを、スクリーンに向かって照射。こちらもエネルギー源は太陽光です。光で絵を描く楽しさとともに、パートナーの動きも意識させする事で、他者との関係性も考えさせられます。
この体験は先着順の整理券制なので、参加するつもりなら朝イチの訪問がおすすめです。会場に入ったら真っすぐこの作品に向かい、まずは整理券を入手してください。体験しない方も、他の方が体験しているところを鑑賞する事は可能です。

オラファー・エリアソン《サンライト・グラフィティ》2012年 Courtesy of the artist; neugerriemschneider, Berlin; Tanya Bonakdar Gallery, New York / Los Angeles © 2012 Olafur Eliasson
最も印象に残った残ったのが、展覧会のタイトルでもある《ときに川は橋となる》。足元の大きなシャーレには水が貼られており、上部からの光が反射して上部のスクリーンにゆらゆらとした水面が映ります。動きが収まってきたな…と思うと、水盤が少し動いて新たな波紋が。アトリウムの吹き抜け空間を利用した作品で、じっと見入ってしまう魅力を持っています。

《ときに川は橋となる》2020年 Courtesy of the artist; neugerriemschneider, Berlin; Tanya Bonakdar Gallery, New York / Los Angeles © 2020 Olafur Eliasson
《ビューティー》は、初期の代表作。暗闇の中に霧状の水が噴霧され、光をあてることで虹が現れます。鑑賞者は霧の向こう側まで進む事も可能で(当然、やや濡れます)、さまざまな場所から虹を眺める事ができます。

《ビューティー》1993年 Courtesy of the artist; neugerriemschneider, Berlin; Tanya Bonakdar Gallery, New York / Los Angeles © 1993 Olafur Eliasson
そもそもは3月14日(土)~6月14日(日)の予定だった本展。美術館は新型コロナの影響で6月まで休館になったため開催が危惧されていましたが、3カ月遅れとはいえ無事に開幕できた事は幸いでした。
入場に関して事前予約は必要ありませんが、当然の事ながらマスク着用などは必須です。訪問前に注意事項を公式サイトでご確認ください。
また、週末は混雑により入場制限することがあります。比較的ゆっくり鑑賞いただける平日のご来館を、強くおすすめします。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2020年6月10日 ]