「子ども」をテーマにした展覧会は、建築やデザインだけに、絞ったものが主でした。
今回は、美術、ランドスケープ、図書館、工芸、家具デザインなど総合的に紹介され今までにない試みです。
建築は興味が分かれそうですが、子供の教育や遊び、学制や浮世絵など、間口は広いのが特徴。展示壁面も工夫があり見どころの一つです。
初挑戦 曲面の壁面
会場を一巡して、いつもと違うというのが第一印象でした。
しかし、それが何によるものかわかりません。
企画の担当、大村理恵子学芸員の解説で納得しました。
「ありえない曲面の壁にチャレンジした」のだそうです。
展示は時系列で、明治から現在に至る時代ごとに、代表する建築家たちの作品を紹介。
太田浩史氏の協力を得て、時代を色分けし「曲面」の壁で構成しました。
会場が狭くギュウギュウ詰めなので、巡回する青森県立美術館で見た方が、美しいかもしれないと自嘲ぎみにおっしゃっていました。
しかし、このコンパクト感は、子どもの頃、狭い路地をすり抜けて走り回った感覚を思い出されました。子どもの目線を体感しているようです。
青森県立美術館の広い会場の展示と比べてみたいと思いました。
訪れた場所が興味を誘う
テーマは「子ども」と「建築」ですが、かつて旅行で訪れた場所が、フックとなってメインテーマへと導かれました。
その一つが旧開智学校、そしてイサムノグチの関連の施設です。
▼旧開智学校
1876年に建築された旧開智学校は、長野の旅行でぶらりと訪れた場所です。
椅子と机があり、教壇で先生が授業を行う懐かしい授業風景。
しかし当たり前に思っていた授業が、教育改革によるものだったという衝撃は、鮮明に記憶に残っています。
寺小屋教育から明治に入り、大改革によってもたらされたスタイル。
勉強の場として校舎が必要となり、西洋と日本がミックスした擬洋風建築の代表です。
通常は展示されていない貴重な図面は必見です。
▼モエレ沼公園
彫刻家イサム・ノグチが最晩年に手掛けたランドスケープ作品。
イサム・ノグチ庭園美術館近くの公園で見た思い出の遊具が目にとまりました。
このマスタープランの図面もまた、今回、初めて展覧会に出品された貴重なものです。
イサム・ノグチは、1950年代から子どもの遊び場に取り組みました。
右の青焼は彼が設計した子どもの国の図面です。
ここがモデルとなり、全国に子どもの国が広がりました。
紫のエリアは、第3章1950-1970万博までの時代です。
ちなみにこの壁は、会場の中で一番、Rがきつい壁面だそうです。
フランスの美術史家が絶賛する美術館
ソフィー・リチャード氏が『フランス人がときめいた日本の美術館』中で、この美術館は、入念な調査のもと、企画の度に徹底的な模様替えを行っていると語っています。
入った瞬間に感じた何かとつながりました。
建築がテーマの展覧会。展示壁面も建築的に構成されていて、一つの見せ場になっています。
ぜひ着目してほしいポイントです。
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