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    レポート
    生誕150年記念 水野年方 ~芳年の後継者
    太田記念美術館 | 東京都
    最初で最後?の大規模展
    昨今は大人気の歌川国芳、その弟子は血みどろ絵で知られる月岡芳年、ひとり飛ばして孫弟子が美人画の鏑木清方。間に入るのが、水野年方です。前後に比べると今ひとつ影が薄い水野年方ですが、その実力は文芸誌の売れ行きを左右するほど。決して侮ってはいけません。初の大規模展が太田記念美術館で開催中です。
    (左奥から)水野年方《『文芸倶楽部』第7巻13号口絵 寂光院》 / 水野年方《『文芸倶楽部』第9巻9号口絵 美人の郊外写生》
    (左から)水野年方《漁する童》 / 水野年方《野婦》
    (左から)水野年方《清仏戦闘之図》 / 水野年方《和漢十六武者至 水滸伝九紋竜史進》
    水野年方《婦有喜倶菜》
    (左から)《三十六佳撰 辻君 応仁頃婦人》 / 水野年方《三十六佳撰 菖蒲 延宝頃婦人》
    水野年方《美人奇石会縦覧之図》
    (左手前から)水野年方《三十六佳撰 虫の音 寛延頃婦人》 / 水野年方《三十六佳撰 卯月 延亨頃婦人》
    水野年方《於威海衛附近我海陸戦隊決死七勇士先鋒上陸之図》
    水野年方《三井好 都のにしき 愛犬》
    国芳 → 芳年 → 年方 → 清方と、一文字ずつ継いでいるので、覚えやすい国芳から清方までの流れ。清方の門人には伊東深水や川瀬巴水らも連なるので、この系譜は日本の近代美術において大水脈といえますが、なぜかスルーされる事が多いのが水野年方です。単発的に作品が紹介される事はあっても、作品をまとめて展示する機会はこれまでありませんでした。

    今年はちょうど生誕150年のメモリアルイヤー。展覧会を担当した太田記念美術館 主席学芸員の日野原健司さんに、企画の意図と見どころを解説していただきました。


    太田記念美術館 主席学芸員の日野原健司さん

    日野原さんに詳しく説明していただきましたが、年方の十八番といえる美人画について、再度ご紹介したいと思います。

    「茶の湯日々草」は、茶事の流れを絵で紹介する揃物。それまで男性のものだった茶道は、近代に入って女性の礼法に組み入れられます。年方は教養として身に着けるべき所作を、気品溢れる女性の姿で描きました。

    「今様美人」は、女性の月ごとの風俗を描いた揃物。「三井好 都のにしき」は、三井呉服店(三越の前身)の広告。描かれている装いは時代が求めていた日本女性の姿で、今ならファッショングラビアといえるもの。清楚で理知的、いかにも大和撫子という女性を描かせたら天下一品でした。


    天下一品の美人画

    日野原さん曰く「ひょっとしたら最初で最後の大規模展かも」との事。その実力に比べるとやや寂しく思えますが、少なくとも近々行われる事はなさそうです。もし美術ファンを自称している方なら、この手の展覧会を見逃すときっと後悔します。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年11月3日 ]

    ようこそ浮世絵の世界へ 英訳付ようこそ浮世絵の世界へ 英訳付

    日野原 健司 (著), 太田記念美術館 (監修)

    東京美術
    ¥ 2,160


    ■水野年方 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2016年11月4日(金)~12月11日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:30~17:30(入館17:00まで)
    休館日
    月曜日休館
    住所
    東京都渋谷区神宮前1-10-10
    電話 03-5777-8600
    公式サイト http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/exhibition/mizuno-toshikata161112
    展覧会詳細 「生誕150年記念 水野年方~芳年の後継者」 詳細情報
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