展覧会のテーマは「おさなごころ」。ちょっと珍しいタイトルは、いわゆる「子ども向けの展覧会」という事にとどまらず、大人が忘れてしまったクリエイティブな「おさなごころ」を思い起こして欲しい、という願いが込められています。

(左)名和晃平《PixCell-Bambi #10》2014年 東京都現代美術館蔵
会場は企画展示室の3階ですが、展示は1階からスタートします。エスカレータ横のシャッターに並ぶ、ユニークな書体の文字。まちでみつけたおもしろい文字を集めた、のらもじ発見プロジェクトの作品です。

のらもじ発見プロジェクト《のらもじ発見プロジェクト》①
3階に進むと「はじめに」ではビーズや結晶による名和晃平らの美しい作品から。吉岡徳仁の《Water Block》は、流れる水を凍らせたようなガラスの椅子。
このゾーンでは、超高精細の8Kテクノロジーによる映像も紹介されています。

吉岡徳仁《Water Block》2002年 東京都現代美術館蔵
続いて「からだとしょっかく」。《A Day in their lives》では、200人のビッグデータをアニメーションで表示。画面の中の人に触れると、巨人になったような目線で楽しめます。
《触覚年表》では、メディア・テクノロジー、科学技術、表現、社会と4つの分野で、紀元前から現在までの「触感」の歴史をひもといていきます。

藤木淳、渡邊淳司、安藤英由樹《A Day in their lives》2015年 協力:株式会社 ビデオリサーチ、藤木寛子

《触覚年表》2018/2020年 制作:ICC+高橋裕行 Design:STUDIO PT. Illustration:Yusuke Mashiba
「おととことば」では《HERO HEROINE》に注目。誰でも憧れる、ヒーローとヒロイン。ステージに立ってポーズをとると、写真のあなたがヒーローに変身!ここだけ動画の撮影も可能です。

GRINDER-MAN《HERO HEROINE》2018年 Supported by ASUS
長い通路は「ぼうきゃく」のゾーン。《非語辞典》では、カタカナをコンピュータでランダムに組み合わせた「非語」がずらり。ただよく見ると、なんとなく意味がありそうな言葉も見つける事ができます。
手をかざすと、あなたの本当の名前をつけてくれる《非語辞典・人名編》もユニークです。

幸村真佐男《非語辞典》1983年~
最後は「ぎんが」。パラボラアンテナの元で、宇宙を探索する小型ドームの動きを照明の光が追いかける《宇宙掃査機》。蓄光塗料を用いた《時花/トキハナ》は、円盤に映像が焼き付けられ、ゆっくりとした回転にあわせて徐々に消えていきます。
天体の回転をイメージしていると思いますが、時間の流れも感じさせます。

森脇裕之《宇宙掃査機》2020年

森脇裕之《時花/トキハナ》2020年
その時間の流れを感じたところで、さらに進むと「はじめに」のゾーンに戻る動線。「まるで生まれかわるように展示空間を再び回遊できる」という趣向です。
会場では、やさしい解説付きのガイドマップも配布中。小さいこどもと鑑賞するポイントについても、紹介されています。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2020年7月17日 ]