本展は「科学と社会」「ナノテクノロジー」「脳研究」「グローバルカルチャー」「未来、科学そして社会」などのテーマについて、科学と芸術という異なるアプローチによって表現します。「科学が私たちの文化にもたらす約束と失敗は?」、「原子レベルでの操作が可能になったことの意味とは?」、「認知プロセスにおいて脳はどのように機能しているのか?」、「国際化の中で自己と他者の境界はどこにあるのか?」など、科学がもたらす問いに対し、アーティストが独自の視点で5つの作品を発表します。
会場に並ぶ5つの作品の周りには、各テーマに関連した22点のサテライトボックスが展示されます。サテライトボックスには、科学にまつわるオブジェ、画像や歴史、ニュースや研究成果がケースや引き出しの中に展示され、それらが各テーマへと導きます。リスニング・ソファでは科学者やアーティストが独自のアプローチを語り、スケッチではそれぞれのアイディアがより深く紹介されます。
また本展の展示デザインは、バロック期に発祥した「ブンダーカマー(世界中の珍しい事物を入れた箱)」に着想を得ています。本物の脳から解剖学の歴史、ナノテクノロジー研究成果からSF映画、知識人による提言や報道写真から芸術作品まで、さまざまな方向性と語り口でメッセージを発する物を、コレクションとして展示します。グローバルな視点から現代社会を切り取るメッセージの数々は、科学者とアーティストの直接対話によって可能となりました。さらに当館では、来館者により発展的に理解していただくために、科学の専門知識をもったインタープリター(展示解説員)やボランティアとの対話の場を設けています。
知識社会の未来を語るためには、高度に複雑化した科学の役割を捉え直す必要があります。『サイエンス+フィクション』は、「社会と科学」というテーマに芸術が関わり、それによって国際社会のあり方や科学の役割について、新たな議論を巻き起こそうという試みです。