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    レポート
    遊びの流儀 遊楽図の系譜
    サントリー美術館 | 東京都
    昔も今も、遊びは大事です。
    どんなに真面目な人でも、仕事や勉強ばかりでは息がつまります。適度な遊びで心身をリフレッシュするのは、現代人だけでなく、時代を超えた普遍的な欲求といえるでしょう。「遊び」をテーマに日本美術を紹介する展覧会が、サントリー美術館で開催中です。
    (左手前から)重要文化財《清水・住吉図蒔絵螺鈿西洋双六盤》桃山時代 17世紀 サントリー美術館 / 《扇文蒔絵螺鈿西洋双六盤》桃山時代 17世紀 南蛮文化館[ともに全期間展示]
    (左手前から)《草花蒔絵双六盤》江戸時代 19世紀 京都国立博物館[全期間展示] / 海北友雪《徒然草絵巻》江戸時代 17世紀 サントリー美術館[全期間展示(場面替え有り)]
    (左手前から)《浄瑠璃物語絵巻》室町時代 16世紀 サントリー美術館[展示期間:6/26~7/22] / 《遊楽図扇面》江戸時代 17世紀 細見美術館[全期間展示(場面替え有り)]
    (左手前から)《左義長羽子板》江戸時代 19世紀 サントリー美術館 / 《貝桶・合貝》江戸時代 18〜19世紀 サントリー美術館[ともに全期間展示]
    《邸内遊楽図屛風》江戸時代 17世紀 サントリー美術館[全期間展示]
    《賀茂競馬図屛風》江戸時代 17世紀 サントリー美術館[展示期間:6/26~7/15]
    (左手前から)《金地うんすんかるた》江戸時代 17世紀 滴翠美術館 / 《天正かるた》江戸時代 17世紀 個人蔵[ともに全期間展示]
    《舞踊図》江戸時代 17世紀 サントリー美術館[全期間展示、7/24~は別の三面]
    (左から)《寛文美人図》江戸時代 17世紀 個人蔵 / 《舞妓図》江戸時代 17世紀 大和文華館 / 《男舞図》江戸時代 17世紀 個人蔵[展示期間:すべて 6/26~7/22]

    遊びに興じる人々を表現した絵画や工芸品を中心に紹介する本展。中でも、数多く展示されている「遊楽図」が見ものとなります。


    展覧会は月次絵(つきなみえ)の紹介から。12カ月の風物を描いた月次絵には、しばしば遊んでいる人々の姿が描かれます。正月の羽子板、12月の雪遊びなど、いまでも馴染み深い遊びも見られます。


    貴族の雅びな遊びとして、よく知られる蹴鞠(けまり)。平安時代に流行しましたが、近世でも行われたため、江戸時代の絵画に描かれています。


    「琴棋書画」も、遊びのひとつといえます。琴・囲碁(将棋ではありません)・書道・絵画の4つの技芸を指し、もとは中国で文人や君子のたしなみとされ、多くの絵画に描かれています。


    江戸時代の邸内遊楽図などでは、琴は三味線に、囲碁は双六(すごろく)に変化。庶民の遊びとして取り込まれています。



    徳川美術館蔵の重要文化財《遊楽図屛風》(相応寺屛風)は、近世初期の遊楽図を代表する逸品です。屋外の水遊びから、輪舞、カルタ、双六(すごろく)、飲食、蒸し風呂まで。まるでアミューズメント施設のようです(展示は7/15まで)。


    双六は、本展の核といえる遊び。そもそも今回の展覧会は、重要文化財《清水・住吉図蒔絵螺鈿西洋双六盤》がサントリー美術館蔵になった事がきっかけです(本展でお披露目となります)。


    西洋双六は、現在のバックギャモンです。サントリー美術館蔵の西洋双六盤は、豪華な装飾が特徴的。清水寺と住吉大社に参詣する人々が、蒔絵と螺鈿で表現されています。


    西洋双六とルーツは同じですが、盤双六は別のゲーム。8世紀には日本に伝わっており、伝統的な遊びです。あまりに流行しすぎて、度々禁令が出されているほどです。


    カルタも西洋由来ですが、こちらは南蛮交易で入ってきた新しいゲーム。「天正かるた」や「うんすんかるた」など、さまざまなバージョンに進化したほか、教養目的のカルタも作られています。


    遊楽図には輪舞する人々がしばしば描かれていますが、江戸時代の寛永から寛文年間には、舞妓をひとりずつ描いた作品が数多く制作されました。絵画の主題は女性や衣装が中心となり、この流れは美人画に繋がっていきます。


    絵の中から声が聞こえてきそうな、楽しい展覧会。髪形やファッションこそ違いますが、リラックスした人々の雰囲気は今と全く変わりません。さらに、その姿を絵画にして室内で楽しむという感性が、とても進歩的に思えました。


    展覧会の会期中、8月6日(火)は、恒例の夏休み特別イベント「まるごといちにち こどもびじゅつかん!」。小・中学生とその保護者を対象に、イベントやワークショップなどさまざまな催し物が行われます。詳しくは公式サイトにて。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年6月25日 ]


    ※会期中に展示替え有り



    料金一般当日:1,300円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon

    会場
    会期
    2019年6月26日(水)~8月18日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00
    休館日
    火曜日(ただし、8月13日は18時まで開館)
    住所
    東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3F
    電話 03-3479-8600
    公式サイト http://suntory.jp/SMA/
    料金
    一般 1,300(1,100)円 / 大学・高校生 1,000(800)円 / 中学生以下 無料

    ※( )内は前売り料金
    ※20名以上の団体は100円引き
    ※前売券は、サントリー美術館受付、サントリー美術館公式オンラインチケット、チケットぴあ、ローソンチケット、セブンチケット、イープラスにて取扱い(各種プレイガイドは一般券のみ販売)
    ※前売券の販売期間は、2019年4月27日(土)~6月25日(火)。サントリー美術館受付での前売券販売(一般、大学・高校生)は、4月27日(土)~6月2日(日)の開館日。
    展覧会詳細 遊びの流儀 遊楽図の系譜 詳細情報
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