
「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」記者発表会場 (左から)高橋明也(東京都美術館 館長)、松尾知子(千葉市美術館 副館長)、宮崎緑(田中一村記念美術館 館長)、中原淳行(東京都美術館 学芸担当課長)
奄美の自然を主題に、澄んだ光にあふれる個性豊かな作品を描きながら、生涯に一度も個展などの形で作品を発表することなく、無名のまま没した画家・田中一村(1908-1977)の大規模な展覧会が、今秋東京で開催されることになり、都内で記者発表が行われた。
田中一村(本名・孝)は、現在の栃木市生まれ。幼少期から画才は卓越して神童と称され、当初は南画家・田中米邨として活動。
東京美術学校日本画科に入学するも(東山魁夷らと同級)2カ月で退学。理由は「家事都合」とされているが、詳細はわかっていない。
千葉に転居してからは農業をしながら制作。日展や院展での落選を経て、50歳にして単身奄美大島へ移住。染色工として働きながら絵に専念する日々を過ごすも、心不全のため69歳で死去した。
没後、三回忌に奄美の人たちが開催した展覧会を地元のメディアが報じたことでその名が知られるようになり、4年後の1984年にNHK「日曜美術館」で取り上げられてからは人気が沸騰。
各地で巡回展が開催されただけだなく、2001年には鹿児島県が主要な作品を収集し、奄美パーク田中一村記念美術館が開館している。
今回の展覧会には絵画作品を中心にスケッチ、工芸品、資料も含め、250件もの作品で一村の全貌を紹介。未完の大作や、近年発見された初公開作品なども多数出品される。
250点は「これまでの東美館の企画展ではおそらく最多」(展覧会担当の中原淳行 東京都美術館 学芸担当課長)という。
東京都美術館 企画展示室で開催される本展は、都心では初開催となる田中一村の大規模展。現在の東京藝術大学を2カ月で退学した後は独学で絵画を模索し「最後は東京で個展を開いて、絵の決着をつけたい」と述べていた一村にとって、ついにゆかりの地・上野で、展覧会が開催されることになる。
「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」は2024年9月19日(木)〜12月1日(日)に開催。観覧料は当日券が一般 1.800円など。