
展覧会を説明する、担当の土屋貴裕 主任研究員(東京国立博物館 学芸企画部企画課特別展室)
日本絵画史上、もっとも有名な作品のひとつといえる国宝「鳥獣戯画」4巻を、一挙に公開する展覧会が開催される事となり、2020年2月13日(木)、都内で記者発表が行われた。
国宝「鳥獣戯画」は、2015年にも東京国立博物館で「鳥獣戯画 ─ 京都 高山寺の至宝 ─」展が開催されるなど、しばしば展覧会で公開されてきたが、今回は、甲・乙・丙・丁の4巻の全場面を、44日の会期中、通期で展示。展覧会では史上初の試みとなる。
この展示により、例えば甲巻は、前半と後半で制作年代が違うと言われているが、これまでの巻き替えての展示では違いが分かりにくかった。全場面の同時展示で、その違いを楽しむ事もできる。
さらに、鑑賞に際しては「動く歩道」を導入。「鳥獣戯画 甲巻」のケース前に「動く歩道」を設置し、絵巻を巻き広げながら鑑賞するような動きを体験できるとともに、全ての鑑賞者が作品を間近で見ることができるようになる、としている。
「動く歩道」は空港などに設置されているものと同基準で、本展のために製造。速度については、鑑賞に適したスピードを、現在調整している。見終わった後に再度鑑賞するためには、もう一度「動く歩道」に乗り直して見る事となる。
「動く歩道」が設けられるのは、著名な場面が多く、人気が高い甲巻のみだが、展覧会では他の3巻にも注目。特に「丙巻の人物は、これまで言われてきた鎌倉時代ではなく、平安時代の作ではないか」(土屋研究員)とも指摘し「今回の展覧会は丙巻推し」(同)と強調した。
展覧会は「国宝 鳥獣戯画のすべて」「鳥獣戯画の断簡と模本」「明恵上人と高山寺」の三章構成。国宝「鳥獣戯画」以外も、原本で失われた場面を留める模本を、国内外から集めて展示。「鳥獣戯画」が伝わる高山寺の秘仏で、普段は公開されていない重要文化財「明恵上人坐像」は、27年ぶりに寺外で公開される。
展覧会は東京オリンピック・パラリンピックの時期にあたるが、この時期の展覧会として「日本美術を代表し、子どもから大人まで楽しめるもの」(井上洋一 東京国立博物館副館長)で企画を進めたところ、鳥獣戯画に決まったという。
展覧会のチラシは表がピンク、裏が黄色という大胆なデザイン。「長い東博の歴史の中で、ここまで振り切ったポスターは初めて」(土屋研究員)だが、反響は良いという。
特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」は2020年7月14日(火)~8月30日(日)、東京国立博物館 平成館 特別展示室で開催。入場料は一般 1,700円、大学生 1,200円、高校生 900円。それぞれ200円引きの前売券、ハンディファンとセットになった前売券(3,000円)は、4月18日(土)発売。

国宝 鳥獣戯画 甲巻(部分) 平安時代 12世紀 京都・高山寺 通期

国宝 鳥獣戯画 丙巻(部分) 平安時代 12世紀 京都・高山寺 通期

重要文化財 明恵上人坐像 鎌倉時代 13世紀 京都・高山寺 通期
発信:
インターネットミュージアム>
「国宝 鳥獣戯画のすべて」 公式サイト>
IM取材レポート(2015年)「鳥獣戯画 ─ 京都 高山寺の至宝 ─」