大勢の観光客が行き交う秋の京都駅にやってきました。駅直結のジェイアール京都伊勢丹7Fにある美術館「えき」KYOTOでは染色家・柚木沙弥郎(ゆのき・さみろう)さんの展覧会が始まりました。柚木さんは1922年生まれ、先月10月17日に100歳のお誕生日を迎えられたアーティストです。

赤いマークが「くらし」 青いマークが「人生」
民藝の柳宗悦との出会いや染色の芹沢銈介に師事したというプロフィールから想像して会場に一歩踏み込みましたが、何か異なる空気が漂っています。まずは絵本原画が並ぶ「絵のみち」を鑑賞。『ぎったんこばったんこ』など読み聞かせも楽しくなる作品から、谷川俊太郎さん(文)との『そしたらそしたら』や、山下洋輔さん(文)との『つきよのおんがくかい』、まどみちおさん(詩)との『せんねんまんねん』など夢のようなコラボレーションの絵本が並んでいます。柚木さんの絵はどの場面もインパクトある動きの瞬間が描かれ、楽しそうな動物たちに思わず口元がほころびます。

絵本原画展示風景 『そしたらそしたら』2000年 木城えほんの郷蔵

絵本原画展示風景 『つきよのおんがくかい』1999年 木城えほんの郷蔵

絵本原画展示風景 『せんねんまんねん』2008年 理論社
柚木さんが絵本を手掛けたのは1994年、72歳を迎えてからとのこと。いろんな出来事のあった日々を過ごし、新たなる挑戦が始まったのです。宮沢賢治の『雨ニモマケズ』もありました。賢治に背中を押されて四次元の世界へ突入したようです。
平面挿絵を飛び越えてセリフや音が聞こえるような立体感・空気感・時間軸を感じます。

展示風景 『宮沢賢治遠景』 ドローイング 1991年 作家蔵

柚木さんの宮沢賢治への思いがわかるコメント
次のシーンは柚木さんの家の一部が再現された空間。世界を旅して集めた民芸品や玩具が並び、ご活躍の日々を伝える映像もあります。好きなものに囲まれての暮らしから元気を貰っていらっしゃるそうです。
![美術館「えき」KYOTO「柚木沙弥郎 life・LIFE展」会場より 柚木さんのコレクション[写真提供: 美術館「えき」KYOTO]](https://www.museum.or.jp/storage//article_objects/2022/11/20/d462e90196ad_l.jpg)
柚木さんのコレクション[写真提供: 美術館「えき」KYOTO]
そして、「布の森」へ。大きな布です。

風の揺らぎを感じるような軽やかさ 「布の森」展示風景
柚木さんの染色は1947年25歳の時から始まり、「型染」の技法を用いて多様な作品を生み出しました。近年は大胆な抽象画風の作品も多く、予想以上にモダンです。そして軽やかです。天井から下る大判の布はまさに樹木、床に敷かれた白い石の造形は古都京都にふさわしく古刹の枯山水庭園の風情で、歴史時間を越えて見守る大木に思えてしまいました。

モダンデザインの作品も素敵

色を指示するノート

職人さんの手や歩く人をモチーフにした染布
様々な角度から柚木沙弥郎さんの活躍を伝える展覧会が各地で開催されていますが、この京都から販売スタートとなるピンバッジも作られていました。
![美術館「えき」KYOTO「柚木沙弥郎 life・LIFE展」 ピンバッジ[写真提供: 美術館「えき」KYOTO]](https://www.museum.or.jp/storage//article_objects/2022/11/20/d7c7bb7cb92c_l.jpg)
ピンバッジ[写真提供: 美術館「えき」KYOTO]
「life・Life」、「くらし」と「人生」をテーマとした作品群は生き生きとしています。赤がお好きなようで、はっきりとした楽しい図柄が明るい気分にしてくれます。また、中京区烏丸のエースホテル京都ではロゴや客室、ロビーなどに柚木さんの暖簾やタペストリーが使用され、今はロビーギャラリーで柚木さんとアレキサンダー・コリ・ジラート氏の二人展も見ることができます。
秋の京都はどこも大人気・大混雑ですが、そっと癒してくれる美術館があります。散策の計画に是非アート鑑賞も組み入れて、楽しんでください。
本日のおやつはテイクアウト。京都駅ビル中央口2Fの「茶寮FUKUCHA」さん(京都福寿園)で最中を購入し、自宅でゆっくりいただきました。

今日はテイクアウトでゆっくり和菓子
[ 取材・撮影・文:ひろりん / 2022年11月15日 ]
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