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    村上隆 もののけ 京都
    京都市京セラ美術館 | 京都府

    開館90周年となる「京都市京セラ美術館」にて、2024年注目の展覧会が始まりました。世界的に評価の高い現代美術家、村上隆(1962~)の大規模個展は国内開催では約8年ぶり。東北の震災以降、京都に移り住んで取り組んできた新作の作品群がパワフルに会場を埋めています。

    また、文化事業の予算減を憂いた村上氏はふるさと納税のしくみを活用し、京都市内の大学生以下の入場料を無料にすることを提案するなど、目標額3億円をクリアしたことによってそれを実現。今後の美術館運営に大きな意識変化をもたらすという、画期的な展覧会となりました。



    京都市京セラ美術館 外観


    まず、中央ホールには人々を災難から守るという高さ4.3mの「阿像」「吽像」が睨みを効かせます。圧倒されつつ新館の東山キューブへ向かうと、壁一面13mの大作が出迎えてくれました。江戸時代の京都の寺社仏閣、町並みの風景、行事祭礼や人々の生活が細かく描きこまれている、岩佐又兵衛の《洛中洛外図屏風(舟木本)》を引用した「洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip」です。よく見ると村上版としていくつものキャラクターがもののけ風に町に侵入していて探すのが楽しいです。



    村上隆《洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip》 2023-2024


    展覧会は6つのテーマ部屋で進行し、約170点中、なんと約90%が新作となりますが、所々には作品に対するコメントがつけられ、読むと一層理解が深まります。



    村上隆 《岩佐又兵衛版洛中洛外図が完成していないことへの言いわけをする村上隆》 2023-2024


    村上氏は、江戸時代に京都で活躍した絵師たちに深く関心を寄せ、代表的琳派の作品などを再構築した作品を多く出展しています。



    村上隆《尾形光琳の花》2023-2024


    金や黒を配置した華やかな色彩と大胆な構図を独自の感性で読み解き、対峙した作品群はまるで現代琳派。俵屋宗達の《風神雷神図》、曽我蕭白の《雲龍図》、尾形光琳の《孔雀立葵図屏風》などをモチーフに、可愛さが滲むキャラクター達や魔除けの赤を使った龍に仕上げたり夏空の色を金色にするなど、村上氏独自の現代感性が溶け込んで化学反応を起こしているかのように楽しく自由な表現があふれています。



    村上隆 (左)《風神図》(右)《雷神図》 2023-2024



    村上隆 制作関連資料展示



    村上隆《金色の空の夏のお花畑》(一部)2023-2024



    村上隆《雲竜赤変図《辻惟雄先生に「あなた、たまには自分で描いたらどうなの?」と嫌味を言われて腹が立って自分で描いたバージョン》》 2010


    「四神と六角螺旋堂」と名付けられた部屋には、平安京遷都に必須とされた四神相応の考えに適応した青龍白虎朱雀玄武を配置する一方、ドクロやもののけを出現させて人々の“死・埋葬”の地、鳥辺野までも表現しています。ちなみに、プラチナ箔を使った像は村上氏の自画像とのことです。



    村上隆《白虎 京都》 2023-2024 (手前)《想像を超えた宇宙の活性を想起する》 2018


    もちろん、村上作品として重要なキャラクターも登場します。DOB君です。伝統的日本美術とアニメ・マンガの平面性を“スーパーフラット”と提唱し、現代視覚文化の概念とする考えは世界のアート界に受け入れられ、今の村上氏を支える根幹となっています。生まれたキャラクターやフィギュア、カイカイキキなど数知れない作品たちは世界中に影響を与え、日本文化の一角を成しているのです。



    村上隆《レインボー》 2023-2024 


    壁一面に並んだお花ちゃんは108枚のパネル。様々な場面に反映されたお花ちゃんは勿論めいっぱいの笑顔です。大好きな1つを選んでみましょう。



    ⑪ 村上隆《Murakami. Flowers Collectible Trading Card 2023》 2023-2024


    そして最後の部屋は京都ならではのテーマ、歌舞伎、五山の送り火、舞妓です。京都に息づく伝統と歴史から生まれた魅了する美術と、現代ポップカルチャーとの接点を探り続ける村上氏の意気込みがこの先も継承されていくことを確信できる展覧会です。

    会期は9月1日までと長期ですが、ショップには限定品が多く並び、2024年3月には美術館の日本庭園にルイ・ヴィトンとのコラボレーションによる巨大彫刻作品《お花の親子》が出現予定とのこと。新たな村上ワールドの側面と、日本アート界への提言が垣間見える世界へ、是非足をお運びください。



    特設ミュージアムショップ


    今日は“もののけ京都”に浸ろうと、美術館近くの満足稲荷神社へ。豊臣秀吉ゆかりのこの神社は折しも節分行事で賑わい、おキツネさまもさぞや嬉しいことでしょう・・厄除けぜんざいを買って底冷えする京都を後にしました。



    満足稲荷神社で厄除け


    [ 取材・撮影・文:ひろりん / 2024年2月2日 ]

    ©2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.


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    会場
    京都市京セラ美術館
    会期
    2024年2月3日(土)〜9月1日(日)
    開催中[あと120日]
    開館時間
    10:00~18:00(最終入場は17:30まで)
    休館日
    月曜日(祝日の場合は開館)
    住所
    〒606-8344 京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124
    電話 075-771-4334
    公式サイト https://takashimurakami-kyoto.exhibit.jp/
    料金
    一般:2,200円(2,000円)
    ⼤学・専門学校生:1,500円(1,300円)
    高校生:1,000 円(800 円)
    中学生以下無料
    ※( )内は前売、20名以上の団体料金
    展覧会詳細 村上隆 もののけ 京都 詳細情報
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