アール・ヌーヴォーから現代に至るまで、チェコのデザイン史約100年間をたどる展覧会が開催されています。
これだけ大規模に時代を追って展示するのは、国内初の巡回展とのことです。
第1章
19世紀末から流行したアール・ヌーヴォー。人気作家の1人、アルフォンス・ミュシャ(チェコ語でムハ)は、チェコの出身です。
展示スペースには、ミュシャの作品をメインとして、アール・ヌーヴォー様式の椅子を取り巻くように、鏡やガラスの花瓶、ポスターが展示されていました。
第1章 展示風景
第2章
ピカソ、ブラックにより創始されたキュビズム。チェコでの特徴は、絵画のみならず建築や家具・インテリアなど立体的な分野で発展したことです。
抽象的な幾何学図形で再構成するというキュビズムが三次元に展開された結果、他に類を見ないものとなりました。能より造形美が追求された椅子が印象的でした。
第2章 展示風景
第3章
チェコのアール・デコは、キュビズム由来の幾何学模様と民族的モチーフを組み合わせています。革製の本の装丁に用いられているのが目を引きました。
第3章 展示風景
第4章
1930年代は、工業化の波と装飾性の高いデザインへの反動から、シンプルな機能主義が主流になりました。
展示室中央の、人間工学を重視してデザインされた椅子《シエスタ》を始め、ミニマムな現代的デザインに驚きました。
第4章 展示風景
第5章
1940年代は、ナチス・ドイツの保護領下となり、ガラス、織物などの伝統工業地域を占領されたことと物資不足により、木製品や陶器が作られるようになりました。
民族の伝統意識がデザインに復興した点に、時代性を感じました。
第5章 展示風景
第6章
共産党政権からの規制が緩やかになった1950年代以降、当時の様々な芸術様式に着想を得たり、有人宇宙飛行の成功からインスピレーションを得た製品が作られるようになりました。
レトロでかわいいデザインが多く、明るさを感じました。
第6章 展示風景
第7章
前章から一転、ワルシャワ条約機構軍に侵攻された1970年代の国内向け製品は低品質で、デザイン的に許容できるレベルまで下がりました。
同じ展示スペースに並べられた、1980年代になって生まれたポストモダンの椅子らが対照的でした。
第7章 展示風景
第8章
民主主義国家への復帰によって、本格的にポストモダンが代表様式となりました。
ウレタンフォームを使ったランプ《PUR》など、これまで抑えてきたものを開放したかのような空気感のデザインでした。
第8章 展示風景
第9章・第10章
こちらは、おもちゃ、アニメーションのテーマ展示です。
素朴で暖かみのあるおもちゃのデザインは、素材を変えながら受け継がれていることが分かりました。また、インテリアになりそうなデザイン性の高さが特徴的でした。
第9/10章 展示風景
通観して見ることで、各時代ごとに歴史や政治に翻弄された影響が、デザインにも色濃く反映されていることが良く分かりました。
観覧される際には、椅子や食器など、気になるアイテムに注目すると違いが分かりやすいかもしれません。
デザインの時間旅行から戻ると、チェコという国が、より身近に感じられるようになりました。
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