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    レポート
    タカニ・アートワークス ~ 鋼の超絶技巧画報 ~ 髙荷義之展
    弥生美術館 | 東京都
    美人画は松園、富士画は大観、戦車画ならこの人です
    プラモデル・ボックスアートの世界で活躍し、中でも「戦車画」を描かせたら並ぶものがいない第一人者として知られる髙荷義之(たかによしゆき 1935~)さん。美術館レベルでは初めての大規模展、原画を中心に約350点の作品・資料を紹介します。
    迫力満点の戦車画
    タミヤのボックスアート 左からタイガーⅠ、キングタイガー
    ピットロードのボックスアート
    軍事専門誌「丸」
    「流星仮面」の挿絵
    学生時代のスケッチなど、貴重な資料も
    少年雑誌の表紙絵
    図鑑・ムック・雑誌
    SF・冒険小説の装画
    1958年にマルサン商店が初の国産プラモデルを発売して以来、各社が追随して大きなブームになったプラモデル。当時の少年の心を掴んだのは、プラモデルの箱に描かれた迫力あふれる完成形のイラスト(ボックスアート)でした。

    日本のボックスアートはレベルが高く、巨匠と呼ばれるアーティストも何人かいますが、そのひとりが髙荷義之さんです。1963年に今井科学(後のイマイ)の1/50スケール「日本名機シリーズ」零戦52型丙を手掛けたのを皮切りに、タミヤ、ニチモ、フジミ、ピットロード、童友社と、多くのメーカーのボックスアートを手掛けています。


    会場にはボックスアートがずらり

    髙荷さんの真骨頂は「戦車画」。作画に際して対象を徹底的に調査し、色彩や形状はもちろんのこと、ボルトの1本1本に至るまでこだわりを持って丁寧に描きます。重量感あふれる鋼鉄の表現は、他の追随を許しません。

    また、戦車だけでなく背景描写も秀逸。荒れた大地、炎上する建物、緊迫した表情の兵士など、想像力豊かに臨場感あふれる場面を描きます。

    発売後に戦車以外の人物や兵器を削除した珍しい資料も含め、会場には数々の戦車画が並びます。


    臨場感あふれる「戦車画」の数々

    会場2階には、初期の作品も紹介されています。

    髙荷さんは、群馬県前橋市生まれ。物心ついた時から絵が好きで、伊藤彦造らの挿絵を熱心に模写していました。県立前橋前橋高校卒業後に挿絵画家を目指し、小松崎茂の門下生に(ただ、内弟子生活は半年ほどでした)。独立後に小学館の少年誌の挿絵でデビューすると、確かな描写力で活動の場を広げ、学習読み物、冒険小説など、多くのジャンルで活躍しました。

    1961年頃から、少年雑誌には戦記ブームが訪れます。雑誌の巻頭で、第二次世界大戦に使われた兵器や戦艦の特集が組まれ、表紙や口絵にも戦闘機や戦車が描かれました。髙荷さんは流行の追い風も受け、多くの少年誌で活躍しました。


    初期の作品や、少年誌の表紙画など

    会場後半では、近年の仕事も紹介されています。

    髙荷さんにとって新しい挑戦となったのが、ロボットアニメをモチーフにしたイラスト。描く対象を入念に調べてから絵を描いていた「戦車の髙荷」にとって、架空のメカを描く事に最初は戸惑ったそうですが、キャラクターを設定したメカデザイナーの協力もあって、その世界観を理解すると、実在の兵器と同様に迫力あふれる描写を実現。平坦な表現が多かったアニメファンに衝撃を与え、新境地を開拓しました。

    さらに、ゲームのパッケージアートにも進出。ボードウォー・シミュレーションゲームや、PC用のシミュレーションゲームやRPGなど、さまざまなゲームの箱絵も手掛けています。


    近年の作品

    取材に伺ったのは会期初日。平日にも関わらず、朝早くから多くの熱心なファンが来館していました。展覧会にあわせて書籍も刊行、近日発売予定です。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年10月3日 ]

    ©創通・サンライズ

    高荷義之: 鋼の超絶技巧画報

    高荷 義之 (著), 堀江 あき子 (編集)

    河出書房新社
    ¥ 2,052

     
    会場
    会期
    2014年10月3日(金)~12月25日(木)
    会期終了
    開館時間
    午前10時00分~午後5時00分(入館は午後4時30分までにお願いします)
    休館日
    月曜日休館 ただし10月13日(月祝)、11月3日(月祝)、11月24日(月休)は開館、10月14日(火)、11月4日(火)、11月25日(火)は休館
    住所
    東京都文京区弥生2-4-3
    電話 03-3812-0012
    公式サイト http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/
    料金
    一般900円/大・高生800円/中・小生400円
    (竹久夢二美術館もご覧いただけます)
    展覧会詳細 タカニ・アートワークス ~鋼(はがね)の超絶技巧画報~ 髙荷義之展 詳細情報
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