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    レポート
    ようこそ日本へ:1920‐30年代のツーリズムとデザイン
    東京国立近代美術館 | 東京都
    90年前も目指していた「観光立国・日本」
    円安を追い風に外国人観光客が急増し、「観光立国・日本」が目前に…とはいっても、現代の話ではありません。今を遡る90年前、第一次世界大戦後の観光ブームを受けた日本では、今と全く同じ現象が生まれていました。戦間期の日本観光イメージを探る企画展が、東京国立近代美術館で開催中です。
    (左から)町田隆要《Osaka Shosen Kaisha(横綱太刀山)》1917年頃 / 町田隆要《大阪商船株式会社(五頭の白馬を御す女性)》1918-19年
    (左から)橋口五葉《日本郵船株式会社(船内でカレンダーを手にする女性)》1913年 / 北蓮蔵《The South Manchuria Railway(扇子を手に腰掛ける着物女性)》1911年頃
    (左から)伊藤順三《南満州鉄道株式会社(長春駅)》1924年頃 / 春田太治平《南満州鉄道株式会社(車輪)》1939年
    (左端から時計回りで)吉田初三郎《日本海中心時代来る 北日本汽船株式会社》1934年 / 《朝鮮郵船株式会社(船内で航路図を広げる家族)》1917年 / 《近海郵船株式会社(朝日丸社旗救命浮輪)》1928-29年 / 吉田初三郎《北日本汽船株式会社(樺太と日本の絵地図)》1919年
    (左から)《大日本航空株式会社》1940年頃 / 《朝鮮博覧会見物と鮮満視察》1929年頃
    (左端から時計回りで)伊藤順三《南満州鉄道株式会社(舞衣装の女性)》1930年代 / 伊藤順三《南満州鉄道株式会社(民俗衣装の女性)》1930年代 / 伊藤順三《南満州鉄道株式会社(玉の頭飾りの女性)》1930-31年頃 / 《満州へ朝鮮へ 旅行は今!》1920年代 / 伊藤順三《南満州鉄道株式会社(子羊を抱いた女性)》1937年頃 / 伊藤順三《南満州鉄道株式会社(乗馬の女性)》1930年代
    (左から)伊東深水《Japan(道成寺)》1932年 / 穴山勝堂《Japan(富士山)》1932年
    (左端から時計回りで)吉田初三郎《Beautiful Japan》1930年 / 《Japan, Kinkauji Kyoto(金閣寺)》1931年 / 《Japan, Great Buddha, Kamakura(鎌倉大仏)》1931年 / 《Japan, Hirosaki Castle(弘前城の桜)》1931年 / 《Come to Japan(錦帯橋の桜)》1931年
    (左から)ピーター・I・ブラウン《Japan(神社夜景)》1934年 / ピーター・I・ブラウン《Japan(宮島)》1934年

    第一次世界大戦終結後の1920年代。世界的に観光がブームとなる中、遠い日本までその影響が伝わってきました。


    大きな要因は、シベリア鉄道と南満州鉄道の連絡による国際線化、パナマ運河の開通などの、交通インフラの整備。外国人観光客を視野に入れた宣伝広告にいち早く乗り出したのも、鉄道や船会社でした。


    ポスターには自社の鉄道網や航路を示すとともに、民族衣装をまとった女性などを掲載。異国情緒を印象づけるスタイルは、後に政府が主導する事になる「日本のイメージ」の形成にもつながって行く事となります。


    ユニークな大阪商船のポスターが、第22代横綱・太刀山を描いたもの。「アメリカを踏みつけた」という抗議が神戸のアメリカ領事館から出ましたが、それが却って評判となりました。


    第1章「交通網の広がりと観光 鉄道と航路」


    1912年には半官半民の外客誘致機関「ジャパン・ツーリスト・ビューロー」が発足。杉浦非水らが手がけたポスターやパンフレットは、主要駅に開設された案内所に掲示されました。富士山や寺社仏閣など現代でもよく使われる観光イメージが、この時期にもみられます。


    興味深いのは、大正末期に行われた外国人観光客へのアンケート。「美しい国」など13項目中4項目で日本は最高点となり、当時も外国人が日本に対して好印象を持っていた事が分かります。


    台湾と朝鮮を日本が統治していたこの時代。満州も含め、東アジア周遊旅行の観光キャンペーンも盛んに行われました。エキゾチックな大陸美人を数多く描いたのは、満鉄弘報(広報)部に在籍していた伊藤順三です。


    第2章「外国人観光客を誘致せよ」


    1929年の世界恐慌の後、政府はさらに観光業を重視する方針を掲げ、国際観光局を設立します。鎌倉大仏など観光地を撮影した写真を利用したポスターは、当時としてはかなり斬新。伊東深水、川瀬巴水、上村松園らを起用して押し出した「美しい日本」のイメージは、貿易収支改善だけでなく、国際的に孤立を深める中「対日世論の是正」という裏ミッションも秘められていました。


    1930年代中頃には景気は回復。国際連盟から脱退は日本円の大幅な下落をよび、皮肉にも観光事業を押し上げる事となりました。ピークは1936年、訪日観光客4万人、消費額は1億円を突破し、外貨獲得高は綿織物、生糸、人絹織物に次ぐ4位と重要な産業となりました。


    第3章「観光立国を目指して」


    ただ、観光への期待はここまで。翌1937年に日中戦争が勃発すると、対日世論は大幅に悪化して訪日外国人は激減。1942年に国際観光局は廃止されてしまいます。


    この後、国によるイメージ作りは、戦争一色に。IZU PHOTO MUSEUMで開催中の「戦争と平和 ─ 伝えたかった日本」展(1月31日まで)につながっていきます。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年1月21日 ]


    日本のポスター: 明治 大正 昭和 日本のポスター: 明治 大正 昭和 

    三好 一 (著)

    紫紅社
    ¥ 1,296


    ■ようこそ日本へ:1920‐30年代のツーリズムとデザイン に関するツイート


    会場
    会期
    2016年1月9日(土)~2月28日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:30まで)
    ※金曜・土曜は20:00まで開館(入館は19:30まで)
    休館日
    月曜日(1月11日は開館)、1月12日(火)
    住所
    東京都千代田区北の丸公園3-1
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.momat.go.jp/am/exhibition/visit_japan/
    料金
    一般 430円 (220円)
    大学生 130円 (70円)
    *高校生以下および18歳未満、65歳以上、キャンパスメンバーズ、「MOMATパスポート」をお持ちの方、友の会「MOMATサポーターズ」、賛助会員「MOMATメンバーズ」会員の方、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
    *それぞれ入館の際、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、会員証、障害者手帳等をご提示ください。
    *( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
    展覧会詳細 ようこそ日本へ:1920‐30年代のツーリズムとデザイン 詳細情報
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