都心では数少ない浮世絵専門の美術館、
太田記念美術館。時折、あまり知られていないマイナーな浮世絵師を特集しており、11月にも月岡芳年の弟子である
水野年方にスポットを当てた企画展を開催しています。
今回の歌川広景も、専門家以外にはほとんど知られていない謎の絵師。作品も70点弱しか確認されておらず、うち50点が「江戸名所道戯尽」です。
幕末の江戸の名所を舞台に、ユーモラスな人々を描いた「江戸名所道戯尽」。1枚目の「日本橋の朝市」は、魚を咥えた犬を追いかける魚売り(いわゆる「サザエさん」状態)、9枚目の「湯嶋天神の台」は、蕎麦屋が犬に足を噛まれて侍の頭に出前の蕎麦がかかる、など、お約束といえるズッコケが連綿と続きます。
実は、作品には元ネタがはっきりしているものも。北斎や広重の作品から、アイディアを丸ごと転用した大胆な作例も見受けられます。
今回も展覧会を担当した太田記念美術館 主席学芸員の日野原健司さんに、歌川広景の創作について解説していただきました。
太田記念美術館 主席学芸員の日野原健司さん江戸名所道戯尽は、人物の表情が特徴的。脱力系というか、ヘタウマというか、なんとも独特の顔つきで描かれています。昇斎一景が描いた人物も同じような表情に見えますが、皆様はどう感じるでしょうか。
人物について「お約束のズッコケ」とご案内しましたが、中には尾籠なネタもあります。具体的な内容については、会場でお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年1月4日 ] |  | かわいい浮世絵
日野原健司 (著), 太田記念美術館 (監修) 東京美術 ¥ 1,944 |
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