準備の過程で口にした青木千絵の言葉から着想を得て「闇へ研ぐ」を表題とした本展は、漆を用いた青木の造形をこれまでの軌跡を辿りながら展示します。漆を一層塗る度に「研ぐ」という地道で静かな反復作業は、作品をかたちづくる技術的な工程であると同時に、青木にとって自身の内面と深く向き合うための時間でもあります。岐阜で生まれ育ち、現在は金沢美術工芸大学にて教鞭を執りながら制作を続ける青木は、造形を丹念に練り上げ、そして一貫して漆という素材を用いて表現し続けてきました。闇に身を沈めながらも、その奥にある光を探るように制作を重ねる-「閣へ研ぐ」は、青木の姿勢そのものです。また、本展の準備にあたっては、同大学芸術学専攻の准教授である金島隆弘が企画監修に入り、その学生たちと協働しながら、青木を調査研究の対象としたアーカイブに取り組みました。スタジオ訪問やインタビュー、展示準備などを通して、作家の制作や思考の背景を丁寧に紐解いていく試みも、本展のもう一つの見どころです。幼少期の記憶が深く刻まれた岐阜という地で作品を展示することは、青木にとっても自身の漆による造形と改めて対峙し直す機会にもなりました。全国の美術館が所蔵する過去作に近作を加えた計5点の造形からは、青木が漆と共に生きた表現そのものがみえてきます。
青木千絵(あおき・ちえ)
漆を用いた造形表現を通して、人間の内面や存在の深層に迫る作品を制作する。身体と抽象形態が融合した独自のフォルムに、奥行きのある艶やかな漆の質感が重なり、言葉にならない感覚や感情を静かに浮かび上がらせる。主な展覧会に『Hard Bodies: Contemporary Japanese Lacquer Sculpture』(ミネアポリス美術館、2017)、『六本木クロッシング2022展:往来オーライ!』(森美術館、2022)など。金沢美術工芸大学、ミネアポリス美術館、徳島県立近代美術館、兵庫県立美術館、金沢21世紀美術館、国立工芸館、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館などが作品を収蔵する。1981年阜県生まれ。2000年岐阜県立加納高等学校美術科卒業。2010年金沢美術工芸大学大学院工芸研究科博士後期課程修了。博士(芸術)。現在、金沢美術工芸大学工芸科漆・木工コース准教授。
ARTIST TALK
青木千絵✕金島隆弘
対談イベント「造形と漆」
日時|10月4日(土)13:30-14:30
会場| 岐阜現代美術館大地館展示室
参加費 |無料 定員|なし
本展出品作家の青木千絵と、企画監修を担当した金島隆弘(金沢美術工芸大学美術科芸術学専攻准教授)が、展示の準備を進める中で見えてきた新たな視点を基に語り合います。
GALLERY TALK
学芸員ギャラリートーク
11月15日(土)15:00~(40分程度)参加費|無料