1979年に竣工した福岡市美術館。設計は近代建築の巨匠で、数々の美術館を手掛けている前川國男です。同じ建築家なので、首都圏の方なら、どことなく東京都美術館と印象が似ていると思うかもしれません(都美は1975年竣工)。
今回は、開館以来初めてとなる大規模リニューアル。前川による建築意匠は残しつつ、さまざまな場所に手を入れ、機能強化を図りました。
最も大きな変更点が、公園側に新設された出入口。美術館は、福岡市民の憩いの場でもある大濠公園内に位置していますが、これまでは園路から直接1階に入る事はできず、エスプラナードを経て2階入り口からしか入館できませんでした。アプローチ広場も含めた整備で、文字通り開かれた印象が強くなりました。
公園口のすぐ脇には、カフェ「アクアム」を新設。2階のレストラン「プルヌス」とともに、ホテルニューオータニ博多が運営します。
ミュージアムショップも拡充され、1階エントランスロビーに設置。所蔵品をモティーフにしたオリジナルグッズに加え、福岡の伝統工芸品も扱っています。
リニューアル記念展は、コレクション展+企画展という構成。コレクション展は、開館以来最大のスケールで館蔵の名品を紹介します。
会場は、草間彌生からスタート。ダリ、ミロ、シャガール、藤田嗣治などに続き、ウォーホル、バスキアなど、モダンアートの著名作家まで。90年代後半以降に収集された現代美術も展示されています。ホワイトキューブの展示室は、最新の照明設計で作品の美しさが際立ちます。
通常は貸しスペースとして利用されるギャラリーA~Fも、今回はコレクション展で利用されています。
50年代後半の前衛美術グループ「九州派」、新版画の巨匠で久留米出身の「吉田博」、福岡市美術館での展覧会を機に再評価が進む「藤野一友」という、個性的なラインナップ。「九州古陶磁」と「アジアの仏教美術」も紹介されます。
1階の展示室は古美術。入って右手の東光院仏教美術室では、入口に金剛力士像、中に進むと十二神将に囲まれた薬師如来立像。寺院のような雰囲気を出しつつ、360度鑑賞可能な展示は美術館ならではの利点です。
松永安左エ門旧蔵の茶道具や、九州からアジアに広がる古美術作品も。現代美術と古美術をともに楽しめる美術館は、あまり例がありません。
企画展は「インカ・ショニバレCBE:Flower Power」。インカ・ショニバレ(1962-)は、英国を拠点に国際的に活躍する美術家。この項でも、2016年の「BODY/PLAY/POLITICS」展(横浜美術館)で紹介しました。当時はMBE(大英帝国勲章五等級勲位)でしたが、2019年よりCBE(三等勲位)の称号を授与されています。
展覧会のテーマは「花」と「力」。日本初の個展で、代表作とともに花をモチーフとした作品を展示。会場最後の《桜を放つ女性》は、本展のために制作された新作です。
リニューアルオープン記念展ならではの特典として、記念展終了後にコレクション展を1回無料でご招待という太っ腹企画も実施中です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年3月19日 ]