身近なものをテーマに掲げ、楽しく、そして美しく紹介する展覧会で定評がある21_21 DESIGN SIGHT。今回は虫がテーマ、館長の佐藤卓さん自らが展覧会ディレクターを務めます。
展覧会の企画監修は、虫好きとしても知られる解剖学者の養老孟司さん。会場各所には、虫に関する豆知識「虫マメチ」や、養老先生の「養老語録」も紹介されています。
冒頭は、佐藤卓《シロモンクモゾウムシの脚》から。700倍に拡大された、シロモンクモゾウムシの中脚です。本物は5mmほどですが、新しい精密写真によってここまでの表現が可能になりました。
他にも気になった作品を、何点がご紹介していきましょう。
山中俊治+斉藤一哉+杉原 寛+谷道鼓太朗+村松 充による《READY TO FLY》は、甲虫の翅(はね)を3Dプリンタで再現した作品です。
緑色のモデルに近づくと、前翅(外側の硬いはね)が開き、中から折り畳まれた後翅(薄いはね)が一瞬で広がります。その構造は、2017年に東大のグループによって解明されました。
「虫」が付いている漢字を並べた《虫漢字のかんじ》。向井 翠(TSDO)の作品で、指で押すと読み方が出てきます。
魚が付く漢字なら回転寿司でも目にしますが、虫が付く漢字は難問ぞろい。蟬(せみ)や蟻(あり)はともかく、螟?蟾?(正解は、ずいむし、ひきがえる)
虫と人との関係を考えさせられる衝撃的な作品が、岡 篤郎+小林真大の《MAO MOTH LAOS》。蛾の研究をしながらブレイクダンサーとして活動する小林マオの、ラオスでの一日を追った映像です。
電灯に誘われた蛾が大量に飛散する中で、黙々と踊る小林。「虫が寄ってくる=気持ち悪い」という固定観念が、ふっ飛ばされます。ちみに昆虫は多くの国で食用になっており、ラオスでも一部の蛾は食されます。
「夏休みは昆虫採集」が定番だった昭和は遠い昔。大人も子どもも、すっかり虫嫌いが増えたと聞きました。六本木で虫の素晴らしさを、改めて見つめ直していただきたいです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年7月18日 ]