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    レポート
    ダイアン・クライスコレクション アンティーク・レース展
    渋谷区立松濤美術館 | 東京都
    そのレースの価値、なんと宝石と同等
    王侯貴族たちの間で富と権力の象徴として流行し、歴史上、常に重要な価値を持ったレース。世界的なアンティーク・レースのコレクターで鑑定家でもあるダイアン・クライス氏の数万点のコレクションのうち、16世紀から19世紀の作品を中心に、渋谷区立松濤美術館で展示されています。
    第2章「レースに表現されるもの」
    《エプロン》フレミッシュ・レース、ボビン・レース、フランドル地方、17世紀後半
    《アンガジャント(ポンパドゥール夫人に由来)》アルジャンテラ・レース ニードルポイント・レース、フランス、1730年代
    《ショール》シャンティリ・レース、19世紀、フランス
    (左から)《洗礼用ヴェール》刺繍とリール・レース チュール・レースに刺繍、ベルギー、1860年 / 《洗礼用ドレス》ヴァランシエンヌ・レース ボビン・レースと刺繍、ベルギー、19世紀 / 《洗礼用のボンネット》ヴァランシエンヌ・レース ボビン・レースと刺繍、ベルギー、19世紀
    《王族もしくは貴族女性のドレス》デュシェスとポアン・ド・ローズ ボビン・レースとニードルポイントレース、ベルギー、19世紀
    《喪の記念》ベッドフォードシャー・レース、ボビン・レース、イギリス、19世紀
    5章「ウォーレース」
    5章「ウォーレース」
    現在では機械織りが主流になったレース。「アンティーク・レース」は、熟練した職人たちが長い年月をかけ、手作業で制作した一級品です。

    第1章「誕生と変遷」では、「ニードルポイント・レース」と「ボビン・レース」の変遷を紹介。その技術は、宮廷文化が花開く18世紀に究極まで高められました。

    ニードルポイント・レースは、刺繍職人の技術が基になっています。この技術は名前の通り、針を刺してレースを作る技法です。

    ボビン・レースは、織り上げた布が端から糸がほつれないよう装飾として処理するため、経糸を交差させて組む房結びの技法が発展したものです。

    どちらも浮かび上がった模様は、薄くて繊細。その背景には気の遠くなるような熟練した職人たちの技が垣間見えます。


    1章「誕生と変遷」、2章「レースに表現されるもの」、3章「王侯貴族のレース」

    続く第2章「レースに表現されるもの」では、技法が発展し、自由な運びが可能となった糸が織りなす様々なモチーフが紹介されます。

    動植物のほか、王侯貴族から農夫といった人々から天使や神仏にいたるまで、多くのモチーフが表されています。

    第3章「王侯貴族のレース」は、名だたる王侯貴族たちを魅了した美しいデザインのレースが並びます。

    才女と言われたルイ15世の公妾・ポンパドゥール夫人は、当時のファッション・リーダーでした。彼女の袖口を彩ったとされるアンガジャントも展示されています。

    かつての王侯貴族たちの肖像画を見ると、襟元や袖口などに精緻なレースが描かれています。レースを装うことは、美意識の高さも表しています。


    4章「キリスト教文化に根付くレースの役割」、5章「ウォー・レース」

    第4章「キリスト教文化に根付くレースの役割」では、冠婚葬祭をはじめとした庶民の暮らしにも浸透したレースが紹介されます。

    19世紀まで洗礼服は色鮮やかで豊かでしたが、王室や貴族の子どもだけは、白で洗礼を受けました。白は、無垢や純粋さ、神との一体感を象徴した色といわれています。

    また亡くなった妻の髪の毛で編んだレースも展示。よく見ると妻の名前が編まれています。こちらはぜひ、無料貸出されている単眼鏡を使ってご覧ください。

    第5章「ウォー・レース」では、第一次世界大戦中にベルギーで生まれたレースが並びます。

    ウォー・レースには従来のレースとは違い、ベルギーの国章や味方の連合国の紋章、平和の象徴がモチーフとして描かれています。政治的な意味が込められた、珍しいレースといえます。

    横浜、京都と巡回した展覧会は東京会場で最後。職人たちが手で作った精緻なレースの世界を間近で見る最後のチャンスです。お見逃しなく。

    [ 取材・撮影・文:静居絵里菜 / 2018年60月11日 ]


     
    会場
    会期
    2018年6月12日(火)~7月29日(日)
    会期終了
    開館時間
    特別展期間中:午前10時~午後6時(金曜のみ午後8時まで)
    公募展・小中学生絵画展・サロン展期間中:午前9時~午後5時
    最終入館はいずれも閉館30分前までです。
    休館日
    6月18日(月)、25日(月)、7月2日(月)、9日(月)、17日(火)、23日(月)
    住所
    東京都渋谷区松濤2-14-14
    電話 03-3465-9421
    公式サイト http://www.shoto-museum.jp
    料金
    一般 500(400)円/大学生 400(320)円/高校生・60歳以上 250(200)円/小中学生 100(80)円

    ※( )内は団体10名以上および渋谷区民の入館料
    ※土・日曜日、祝休日及び夏休み期間は小・中学生無料
    ※毎週金曜日は渋谷区民無料
    ※障がい者および介助者1名は無料
    展覧会詳細 「ダイアン・クライスコレクション アンティーク・レース展」 詳細情報
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