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    レポート
    没後60年 北大路魯山人 古典復興 ― 現代陶芸をひらく ―
    千葉市美術館 | 千葉県
    海原雄山のモデルはこの人です
    書、篆刻、絵画、陶芸、料理と、多彩な分野で活躍した北大路魯山人(1883-1959)。周囲との摩擦を恐れず、真っ向から主張するその人となりは、生前から好き嫌いが分かれる人物でもありました。魯山人の作品120点を中心に、昭和陶芸の広がりを紹介する展覧会が、千葉市美術館で開催中です。
    北大路魯山人《萌葱金襴手鳳凰文煎茶碗》1939(昭和14)年 中野邸記念館
    (左手前)北大路魯山人《色絵魚藻文染付鮑形鉢》1935-44年(昭和10年代) 世田谷美術館(塩田コレクション) / (右奥5客)中国 景徳鎮窯《古染付巻貝形向付》17世紀(明時代) 愛知県美術館(木村定三コレクション)
    (左から)北大路魯山人《赤絵双魚文皿(赤絵魚文皿)》1941(昭和16)年頃 世田谷美術館(塩田コレクション) / 北大路魯山人《色絵赤玉見込春字向付(赤絵碗形向付)》1941(昭和16)年 世田谷美術館(塩田コレクション)
    (左手前から)北大路魯山人《刷毛目寿字鉢》1935-44(昭和10年代) 世田谷美術館(塩田コレクション) / 北大路魯山人《刷毛目平茶碗》制作年不詳 逸翁美術館
    (左奥)北大路魯山人《織部間道文俎鉢》1953(昭和28)年頃 八勝館 / (右手前)北大路魯山人《織部秋草文俎鉢》1949(昭和24)年頃 八勝館
    (左から)北大路魯山人《雲錦大鉢》1940(昭和15)年 世田谷美術館(塩田コレクション) / 北大路魯山人《色絵金彩雲錦鉢》1950(昭和25)年頃 八勝館
    北大路魯山人《乾山風金彩絵替向付》1949(昭和24)年頃 八勝館
    (左奥)北大路魯山人《日月椀》1937(昭和12)年 世田谷美術館(塩田コレクション) / (右手前)北大路魯山人《桃山風椀》1944(昭和19)年 京都国立近代美術館
    (左から)北大路魯山人《銀彩古代形花入》制作年不詳 銀座 黒田陶苑 / 北大路魯山人《銀彩色絵双魚文四方皿》1955(昭和50)年 北村美術館

    没後60年を経て、神話化が進む魯山人。漫画『美味しんぼ』の海原雄山のモデルといえば、イメージしやすいかも知れません。忖度だらけの現代から見ると、幾多の傲慢エピソードが逆に清々しく思えます。


    「料理の着物」としてやきものに向き合ったため、魯山人の陶芸といえば食器です。ただ本展では、その作陶のベースとして茶道に目を向けました。


    中世以来、日本文化の核といえるのが茶道。魯山人が引き受けた名料亭「星岡茶寮」も、そもそもは茶の湯のための施設です。魯山人が追及した美においても、茶道は常に中心的な位置づけでした。


    展覧会は7章構成です。「書・漆・画」を集めた5章以外は、ほぼ年代順です。


    20代後半に朝鮮半島や中国大陸を旅行した事もあり、魯山人の初期のやきものは中国陶磁風。ただ、徐々に中国趣味は後退していきます。


    名品として知られる《萌葱金襴手鳳凰文煎茶碗》は、新潟の豪商から依頼され、金に糸目を付けずに制作した作品です。鳳凰の文様は金箔です。



    1927年に自らの窯を完成させた後、荒川豊蔵らをともなって朝鮮半島の古窯跡巡りへ。持ち帰った土で器物を作っています。魯山人の茶碗をいち早く評価したのは、小林一三でした。


    魯山人は近代の陶芸家の中では、かなり早い時期から桃山陶の魅力に目を付けた人です。織部・志野・黄瀬戸など、桃山陶に倣った作品をいくつも制作。土の板に脚をつけ、端をやや反らせた「俎鉢(まないたばち)」は、魯山人オリジナルのフォルムです。


    戦後になると、古典復興を目指す陶芸家たちが新しい活動を進めますが、先駆者といえる魯山人はほとんど関わりを持ちませんでした。ただ、魯山人邸の離れに仮寓したイサム・ノグチをはじめ、後年の芸術にもさまざまな影響を与えています。


    魯山人ゆかりの名料亭・八勝館(名古屋市)が所蔵する作品と、世田谷美術館の塩田コレクションを中心とした本展。古美術というと、関東の人はどうしても京都に目がいきますが、実は中京圏も「蔵の深さ」は折り紙付き。首都圏での展覧会で、これだけ中京から名品が揃う機会は滅多にありません。


    碧南市藤井達吉現代美術館で開幕した巡回展。千葉展の後に、滋賀県立陶芸の森 陶芸館に巡回します(9/14-12/1)。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年7月2日 ]


    NHK 美の壺 魯山人の器NHK 美の壺 魯山人の器

    NHK「美の壺」制作班 (編集)

    NHK出版
    ¥ 1,026

    会場
    会期
    2019年7月2日(火)~8月25日(日)
    会期終了
    開館時間
    午前10時-午後6時 (入場は午後5時30分まで)
    金曜日・土曜日は午後8時まで (入場は午後7時30分まで)
    休館日
    8月5日(月)
    住所
    千葉県千葉市中央区中央3-10-8
    電話 043-221-2311
    公式サイト http://www.ccma-net.jp/
    料金
    一般 1,200(960)円 / 大学生 700(560)円 / 小・中学生・高校生 無料

    ※( )内は前売券および20名以上の団体料金
    ※障がい者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料
    ※前売券は千葉市美術館ミュージアムショップ(6月23日まで)、ローソンチケット(Lコード:33202)、セブンイレブン(セブンチケット)などで販売
    展覧会詳細 没後60年 北大路魯山人 古典復興 ― 現代陶芸をひらく ― 詳細情報
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