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    レポート
    国宝 雪松図と明治天皇への献茶
    三井記念美術館 | 東京都
    六畳の囲い屏風になりました
    明治20年(1887)2月1日、京都御所の博覧会場で開催された第16回京都博覧会「新古美術会」に、明治天皇と昭憲皇太后が行幸。三井家が明治天皇へ献茶を行いました。円山応挙筆の国宝《雪松図》をはじめ、茶会で使われた品々を紹介する展覧会が、三井記念美術館で開催中です。
    《金襴手鳳凰文天目》和全 明治時代
    《日の丸写佂 䆦啄斎文字鋳込》大西浄玄 江戸時代
    《菊蒔絵面取茶箱 一式》江戸時代
    国宝《志野茶碗 銘卯花墻》桃山時代
    歌川芳藤《東京府通町ヨリ呉服橋之遠景》明治元年(1868)
    国宝《雪松図屏風》円山応挙 江戸時代
    《青磁遊鐶杓立》明時代・16世紀 / 《椎頭火箸》中川浄益 明治時代 / 《備前胴紐建水》明時代・16~17世紀 / 《祥瑞松竹梅花鳥文胴締水指》明時代・17世紀
    (左から)《九郎義経》安田靫彦 昭和17年(1942) / 《草子洗小町》安田靫彦 昭和37年(1962)
    重要文化財《古筆手鑑「たかまつ帖」》奈良~江戸時代

    年末年始の三井記念美術館といえば国宝《雪松図屏風》。昨年は「動物アート」、一昨年は「バードウォッチング」と、展覧会はいつも雪松図にあわせたテーマを立てています。


    今年は令和改元にちなみ、天皇に関係する品々を展示。「三井家による明治天皇への献茶」が中心になります。


    まずは皇室の菊の紋章にちなんで、菊をデザインした茶道具や工芸品から。《桐木地菊置上茶箱》には、胡粉で菊の文様が見事に盛り上がっています。


    国宝の茶室「如庵」を再現した展示ケースには、国宝の志野茶碗《銘卯花墻》も展示。日本で焼かれた茶碗で国宝に指定されているものは、わずか2点のみ。うち1点がこの「志野茶碗 銘卯花墻」です(もう1点はサンリツ服部美術館蔵の本阿弥光悦《白楽茶碗 銘不二山」》)。床にかかる和歌もお見逃しなく。後水尾院による書です。


    展覧会メインは展示室4。「明治天皇への献茶」関係の美術品が並びます。



    献茶が行われたのは、明治20年(1887)の京都博覧会。「新古美術会」と題し、京都御所御苑内で開催されました。


    ちょうど孝明天皇の20年祭のため京都に滞在中だった明治天皇皇后両陛下は、博覧会に行幸。会場の一角には抹茶と煎茶の献茶席が設けられ、北三井家九代の高朗(たかあき)と十代の高棟(たかみね)が抹茶席の亭主になり、表千家の碌々斎の点前で献茶が行われました。


    展覧会では、茶席で用いられた道具が紹介されています。永樂和全の茶碗《赤地金襴手鳳凰文天目》、藤原定家の書《小倉色紙「うかりける…」》、明時代の水指《祥瑞松竹梅花鳥文胴締水指》など、いずれも見事な品々です。ちなみに国宝《雪松図屏風》は、六畳囲い屏風として用いられました。


    この展示室には、興味深い椅子も。新橋~横浜間の鉄道開業式で明治天皇が使われた御休所用の御召椅子で、初公開となります。北三井家八代・高福(たかよし)は鉄道開業式当日、新橋駅で東京市中の商人総代として挨拶をしており、御召椅子が三井文庫に伝わっているのも、この関係によるものと思われます。


    続いて、帝室技芸員の作品。皇室が美術・工芸家を保護する制度である帝室技芸員は、明治23年(1890)に制定。三井記念美術館では柴田是真、竹内栖鳳、安田靫彦らの作品を所有しています。今回は小さな作品が展示されています。


    最後の展示室には、三井家当主が描いた絵画も紹介。もちろん、師匠の手が全く入っていないとは言い切れませんが、それを差し引いてもなかなか見事な作品が並びます。


    国宝《雪松図屏風》の展示は恒例といえるので、当初は図録を作る予定はなかったそうですが、企画を進めるうちにどんどん充実。当日の茶会の模様の解説を含め、63ページの立派な図録も出来ました(1,500円)。ミュージアムショップで販売中です。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年12月13日 ]



    会場
    会期
    2019年12月14日(土)~2020年1月30日(木)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:00まで)
    休館日
    年末年始12月27日(金)~1月3日(金)休館、1月14日(火)、1月26日(日)休館
    住所
    東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 三井本館7階
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.mitsui-museum.jp
    料金
    一般 1,000(800)円 / 大学・高校生 500(400)円 / 中学生以下無料

    ※ 70歳以上の方(要証明)、また20名様以上の団体の方は( )内割引料金となります。
    ※ リピーター割引:会期中一般券、学生券の半券のご提示で、2回目以降は団体料金となります。
    ※ 障害者手帳をご呈示いただいたお客様、およびその介護者(1名)は無料です。
    展覧会詳細 国宝 雪松図と明治天皇への献茶 詳細情報
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