古代から現代まで世界の名だたる博物館・美術館の歴史を政治・社会・文化の視点からたどる書籍『博物館・美術館の世界史』が翻訳出版された。
「古さ」や稀少性、美しさへの憧れから始まり、財力の誇示、権力の象徴、政治思想の反映、そして一般市民に開かれた社会・文化や教育に寄与する博物館へと進んでいった、人類の「蒐集」をめぐる歴史をまとめたもので、今回出版されたのは全3巻のうち第1巻。
著者は『コレクション』で知られるクシシトフ・ポミアン、訳者は『博物館学・美術館学・文化遺産学基礎概念事典』の訳者・水嶋英治。
古代ギリシア・ローマや中国からヨーロッパ、ロシア、トルコ、日本、アメリカまで幅広い地域を網羅していることに加え、これまでの「博物館史」は古代・中世についてはわずかな記述しかなかったが、本書は古代・中世だけで500頁を超える。
詳細な索引を付し、レファレンスにも活用できる。歴史学者・本村凌二氏が解説、図版も120点が収められている。
「博物館・美術館の世界史 Ⅰ(全3巻)」は東京堂出版より発売中。22,000円。
https://www.tokyodoshuppan.com/book/b10041283.html
第1部 個人コレクション 三つの誕生物語
1 宝物の時代――墳墓、寺院、宮殿
2 中国とローマ――個人コレクションの二重の起源
3 キリスト教徒の宝物――金と恵み4 個人コレクションの復活
第2部 イタリアの博物館 一五世紀から一八世紀まで
5 古代遺物への反応
6 衰退と古代美術品への回帰
7 古代美術の勝利
第3部 アルプス越えの旅 一六世紀から一八世紀まで
8 絵画と古美術品
9 好奇心の部屋 クンストカンマー
10 自然史――陳列室から博物館へ
11 美術館へ向けて