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    レポート
    ウィリアム・モリス 原風景でたどるデザインの軌跡
    奈良県立美術館 | 奈良県

    皆様の部屋の壁紙やカーペットはどんな風合いにされていますか? 

    日本でも人気のデザインの巨匠、奈良県立美術館で開催の『特別展 ウィリアム・モリス』に出かけてきました。絵画とは異なり、華やかなセンスある展覧会でした。 



    奈良県立美術館外観--せんとくんもお出迎え



    館内の導線もシャープ


    19世紀のイギリスは、産業革命後さまざまなスタイルを満杯に取り入れて大量生産の工業製品を豊富に生み出すことを得意としていました。そんな中、ウィリアム・モリス(1834~1896)は手作業をもって高い品質の製品をつくることを重視します。

    手の込んだ木版での製造過程で高価になったこともその芸術性を好む人々には問題ではなかったようです。芸術家、詩人・・多彩な分野で活躍し“モダン・デザインの父”と称されるウィリアム・モリスの生涯と軌跡をたどる構成で進みます。



    ウィリアム・モリスの生涯に沿って展示が進行



    共に活動した人々や生活の場面を解説


    まずは初めて手掛けた壁紙デザインや内装に参画した家「レッド・ハウス」が紹介されます。

    ひなぎくや柘榴など果実・植物が好んでデザインされていますが、今回は写真家の織作峰子さんの作品も要所要所に配置され、デザインと実物の写真を見比べながら鑑賞することができます。色調は優しいものが多く、ポイントに原色を入れて際立たせます。花や果物はその大小をうまく配置し繰り返される流れを作り出していて、左右・上下対象にしたデザインは大きな壁面を飾りやすく感じます。

    柳のモチーフは木ではなく葉っぱを使用しているのですが一見不統一な感覚にも見えながら大きな流れを見出すこともでき、風に揺れるのか川に浮いて流れるのか・・デザイン作品は少し引いたところから見るといいのかもしれません。

    チューリップやバラなどの花や、果実の模様に囲まれた部屋は可愛さ満点で日本でも大人気!デザインには川の名前がつけられたものもあり、モリスが過ごした暮らしの風景をモチーフにしたようです。



    《柘榴あるいは果実》壁紙1866年頃木版色刷り と織作峰子写真《柘榴》《檸檬》



    《格子垣 白》 《格子垣 黒》壁紙 1864年 木版色刷り



    《るりはこべ》1876年



    《いちご泥棒》内装用ファブリック1883年



    《柳 緑》《柳 金色》1874年



    《メドウェイ》内装用ファブリック 1885年



    《ひまわり 赤》と《ひまわり 青》壁紙1879年


    モリスが最も愛したケルムスコット・マナーや、出会った仲間たちとの装飾美術にかける研究の日々など幅広い方面での活動を重ね、こだわりある作品は人々に受け入れられ、現在においても多くのファンを引き付けています。ロマンチック、乙女チックで人気なだけではないのです。

    ファブリックだけではなく、部屋の内装や家具、小物、そして本の装丁など作品は多岐にわたります。シェイクスピアの書物やタイル、娘さんが刺繍を施した衝立なども本当に素敵です。染色実験を重ね、インディゴ抜染法を完成させるなど後世に与えた影響も留まることがありません。



    川の名にちなむ作品命名



    暖炉の衝立《クランフィールド》デザイン:ウィリアムモリス 刺繍:おそらくメイ・モリス1890年頃



    《ハマスミス・ラグ》木綿の縦糸にウールの手結び織り1880年頃



    《兄弟うさぎ 青》木版、色刷り、インディゴ抜染、木綿1882年



    ウィリアム・シェイクスピア『詩集』1893年ケルムスコット・プレス


    写真、スライド、作品が工夫された配置となって見る者を飽きさせません。日本でも生活が洋風化し、お洒落なデザインはすぐ取り入れられました。モリス柄とわかるデザインは彼の広告にもなりました。

    また、モリスをはじめて日本に紹介したといってもいい、富本憲吉の展示室もあり、とてもオトク感のある展覧会です。この楽焼や日用品などモダンながらとても使いやすそうです。奈良県出身の富本憲吉はモリスの芸術思想に傾倒し、柳宗悦らと共にアーツ・アンド・クラフツの潮流を極めてゆくのです。

    ロンドン郊外にはモリスのギャラリーがあり、多くの人が訪れることが紹介されています。



    スライドで映像も楽しめる



    館内の様子



    《楽焼草花模様蓋付壺》富本憲吉



    《磁器 色絵四弁花更紗模様六角飾筥》富本憲吉



    やはりお土産はモリス柄グッズを


    奈良市内にはご存知のとおり様々な寺社仏閣があり、その歴史を伝えていて何度訪ねても楽しめる大きな古都です。奈良駅から奈良県立美術館に行くまでの間だけでも見所は多く、時間が必要です。

    今回は興福寺の五重塔から落慶なった中金堂、国宝館を散策し、神の使いといわれる鹿にもご挨拶!のんびりしたものです。



    猿沢の池から興福寺五重塔を望む



    興福寺中金堂



    観光客を待つ鹿さん


    そしてモリス展鑑賞余韻の休息は美術館からほど近い「天極堂」へ。こちらでは吉野本葛を使ったお食事を味わえますので“くずかけ丼”とつきたてのあたたかい“葛餅”をいただきました。ヘルシーにほっこり、部屋の模様替えなどを想像しながらの「なら時間」を過ごさせていただきました。



    葛を使ったお料理



    優しい味わいのくず餅


    [ 取材・撮影・文:ひろりん / 2021年6月25日 ]


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    会場
    奈良県立美術館
    会期
    2021年6月26日(土)〜8月29日(日)
    会期終了
    開館時間
    9:00~17:00(入館は16:30まで)
    休館日
    ・毎週月曜日(その日が国民の祝日である場合は開館、翌平日休館)
    ・年末年始
    ・展示入替期間
    住所
    〒630-8213 奈良県奈良市登大路町10-6
    電話 0742-23-3968
    公式サイト http://www.pref.nara.jp/11842.htm
    展覧会詳細 ウィリアム・モリス 原風景でたどるデザインの軌跡 詳細情報
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