根津美術館が所蔵する屈指の名品「百椿図」。「本之巻」「末之巻」の2巻の巻物で、100余種の園芸品種の椿が描かれています。
2巻あわせると約24メートルという大作。いままでも何度か出品されたことはありますが、今回の展覧会では可能な限り広げて展示したことで、ほぼ全貌を見ることができます。
百椿図百椿図の椿は、様々な器物を花器に見立てて描かれているのも特徴のひとつ。
花瓶、籠、三方、膳などは普通ですが、文箱、硯箱、扇、団扇、ちりとり、羽箒…はては大根にいたるまで、身の回りの様々な品を使って椿を飾っています。いわば、江戸時代のフラワーアレンジメントといえるものです。
また図中には皇族や門跡、公家や大名、歌人や俳人、儒学者、僧侶など49人の人々が和歌や俳句、漢詩を書いています。
丹波(現在の兵庫県)篠山藩主の松平忠国とその息子が二代にわたって書いてもらったようで、その冒頭は徳川光圀。ご存知、水戸の黄門さまによるものです。
会場展覧会には百椿図のほかに、室町時代の花鳥画や江戸時代の工芸品なども出展。
また同時開催のテーマ展示は、展示室2で守護神・福徳神の絵画を展示する「天部の絵画 守護と福徳の神々」、展示室6では新年を迎えて最初に行う茶会、初釜にふさわしい道具を紹介する「初釜を祝う」も紹介されています。
可能なら、和服を着て鑑賞したい展覧会。新春に相応しい、雅な雰囲気をお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2012年1月6日 ]