まさにできたてのホヤホヤ。新しい建物の匂いが充満しています。 構想から40年、2021年6月30日「大阪中之島美術館」が竣工し、2日後の7月2日竣工内覧会が開かれました。
建物の北側。ヤノベケンジ《シップス・キャット(ミューズ)》が出迎えてくれる
建物は地上5階建て。一般家屋の10~11階建ての高さに相応します。1,2階は無料開放スペース。カフェやミュージアムショップ、ワークショップルームや親子休憩室などが配置され、自由に人が行き来できるようになります。
それぞれの階には入口が3カ所あり、メインエントランスはどこ?と探すのはもはや古い感覚なのか…そんな新鮮味も感じました。
1階、2階の見取り図

1階から2階への大階段
また東側周辺施設と美術館の2階は歩行者デッキで行き来できる構造になっています。南側にある国立国際美術館ともいずれデッキで繋がるそうです。
歩行デッキからみた美術館
美術館に一歩足を踏み入れると、1階から5階までの吹き抜け天井と広々としたロビーには驚かされました。設計者遠藤克彦(株式会社遠藤克彦建築研究所 代表取締役)は「さまざまな人と活動が交錯する都市のような美術館」としてこの「パッサージュ」と呼ばれる空間を生み出しました。
縦横にと人の動きを見ることができます。館内を越え外へも広がる動線は、中之島のこれからに大きな活力を与えてくれるでしょう。


2階にチケット売り場
展示室のある4、5階へは2階から長いエスカレーターが運んでくれます。建物を縦に突っ切っていくダイナミック感。非日常感。この建物の醍醐味です。

エスカレーターで展示室へ

建物を突っ切っていくような気分に!
4階にはコレクション展を前提とした2つの展示室があります。 1つは、日本画などに対応したガラスケースが設置された部屋。3辺ぐるりと囲む約60mのケースは見事です。

ガラスケースのある展示室
もう1室の一部は黒い壁になっています。この中之島は、戦後日本を代表する芸術運動の一つ「具体美術協会」(具体)の活動拠点の展示施設「グタイピナコテカ」があった場所。土蔵を改修した「グタイピナコテカ」は壁が黒だったと言われています。
その記憶を引き継ぐ意味を込め、4階に黒い壁のある展示室が設けられました。そこに具体の作品を展示する予定です。

黒い壁の展示室。具体のコレクションが展示予定。
5階の展示室は、約1700平米、天井高6mと関西有数を誇る広さです。稼働壁で自由に区切ることもでき、様々な企画展に対応できます。

奥行広さを感じてほしいと、菅谷館長が部屋の奥へ。

5階の展示室
4階と5階を結ぶ階段の緩やかな傾斜は、鑑賞後の余韻を楽しませてくれそうです。各階の窓からの景色はフル回転した脳を落ち着かせてくれるはず。
美術展を楽しむ私たちをそっと支えてくれるような工夫が建物に散りばめられています。建物が美術鑑賞体験をより一層深めてくれそうです。

4階と5階を結ぶ緩やかな階段

4階のパッサージュ。ある時は展示、ある時は休憩スペースなど様々に対応できる仕組み
館長の菅谷富夫は、「出来上がったばかりの新しい美術館を前にワクワクしている。」と言います。そのワクワクはこれからどんどん日本中に広がっていくことでしょう。来年2月のオープンが一層待ち遠しくなりました。

美術館の北側に設置

美術館1階南側入り口。目の前には国立国際美術館

各階には窓があり、風景も楽しめる
[ 取材・撮影・文:カワタユカリ / 2021年7月2日 ]
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