「清流の国ぎふ芸術祭 Art Award IN THE CUBE 2023」(以下AAIC)が、岐阜県美術館で始まりました。
第1回のテーマは“身体のゆくえ”、第2回のテーマは“記憶のゆくえ”でした。第3回となる今回は“「リアル」のゆくえ”です。展覧会場には、アイディアを詰め込んだ14点の作品が全国から集まりました。
岐阜県美術館ロビー
AAICでは、作品のサイズを、丈六サイズ(幅4.8m×奥行4.8m×高さ3.6m)以内と規定しています。また、前回は、美術館の庭園や、お隣の図書館にも作品が設置されていましたが、今回は美術館の屋内のみとなりました。
展示室にて
ナンヤローネステーション(案内所)の手前の入口から展示室3に入ります。すると、すぐ右手側に、今回のAAIC2023で大賞となった作品のキューブがあります。
展示風景 展示室3
キューブのカーテンを開け、中に入ると、真っ暗な空間の床面に目玉焼きのような映像が映し出されています。作家が岐阜の河川で採取した石を熱で溶かした様子です。石を溶かすために使った熱は、電気でもガスでもなく、太陽の光だそうです。太陽の光だけで石が溶けることに、とても驚きました。
千葉麻十佳≪Melting Hida Mountains≫
この作品のキューブの入口の反対側に、映像に使われた石の「リアル」があります。ぐるっと回りこんで、見つけてください。
次のキューブは外側が真っ黒です。中に入ると、やはり真っ暗ですが、目が慣れると、中央に柱のようなものがあり、時計がたくさん掛かっていることがわかります。
岡ともみ≪サカサゴト≫
よく見ると、時計の文字盤の数字は左右反転しています。時計の針も反時計回りに進んでいます。柱時計は「リアル」ですが、全体の光景は非「リアル」です。 何かしら黄泉の国への入口のような雰囲気です。
今回のAAICの最年少入選者は高校生(愛知県立旭丘高校)です。作品では、夢や不安をないまぜにした作家の心情が軽快なテンポの映像に仕立てられています。部活では、ラグビー部のマネージャーをしているそうで、作品の中にも「リアル」な練習風景が映っています。
INAGAKI MOMO≪JK in the street.(普通の女子高生)≫
作家には、近い将来、大学進学と留学の夢があるそうです。ぜひ「リアル」にして欲しいと思います。
展示室3の他の作品も鑑賞し、展示室4に向かいます。 途中の多目的ホールには、大きな透明のバルーンのような作品があります。この作品は、中に入って寝転ぶことができます。訪問日は、お天気が良く、天窓越しに見える青空が気持ちよかったです。
展示室4の奥側に、色味の異なる赤いボールのようなものを簾のようにぶら下げた作品が置かれています。この作品は、手前側の開口部から中に入ることができます。
大西康明≪石と柵 岐阜≫
これまでの作品は、キューブの内側に作品を囲い込んでいましたが、この作品は、外からも内からも鑑賞できます。展示室4の一方の壁面は大きな窓になっていて、室内の明るさと相まって、とても開放的で新鮮な印象です。
透明感に驚かされた作品もあります。遠目で見たときは、白い枠だけかと勘違いしてしまいました。一見ビニールシートのようですが、材料は身近にある他のものです。どうやって透明な壁を作ったのか、「リアル」を想像してみてください。
小孫哲太郎≪NAGAMERU≫
身体企画ユニット ヨハクの作品は、時間によって大きく印象が変わります。パフォーマンスの時間以外だと、壁と床にマス目が描かれた空っぽの舞台装置のようです。一方、パフォーマンスが始まると、壁面に映し出される映像と見事にシンクロした動きをダンサーたちが見せてくれます。
身体企画ユニット ヨハク≪スクランブル交差空間ー不干渉の調和ー≫
美術展ではなく、芸術祭ならではの作品ということで大いに楽しめました。 5月と6月にも、パフォーマンスが予定されています(詳細は、ぎふ芸術祭のHP参照)。
「清流の国ぎふ芸術祭 Art Award IN THE CUBE 2023」は、入場無料です。ぜひ「リアル」な芸術祭を目撃しに来てください(体験作品もあるので、鑑賞時間には余裕をもってご来場ください)。
[ 取材・撮影・文:ひろ.すぎやま / 2023年4月22日 ]
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