近年、再び注目を集めている南部鉄器。そのきっかけは、フランスやベルギーのハイセンスなティーサロンに、海外輸出用の南部鉄器のカラフルなティーポットが選ばれたことでした。
伝統的な技法にこだわり、質実剛健でありながら、ぬくもりも感じられる南部鉄器の世界。展覧会では歴史的な流れから新しい生活への提言まで、幅広く紹介していきます。
会場展覧会は3部構成、まず第1部は「南部鉄器の歴史 伝承される美」です。
そもそも岩手なのに何で南部?というと、その名前は盛岡藩主の南部氏から。南部鉄器は歴代の藩主が庇護し、明治時代には国内外の博覧会で人気を呼びました。
この章では江戸時代から明治、大正、昭和までの南部鉄器を紹介。受け継がれてきた技術の中で育まれた、南部鉄器ならではの美を展観します。
第1部「南部鉄器の歴史 伝承される美」第2部は「南部鉄器の模索・挑戦といま」。戦後、新しいデザインによって復興していった各工房発の南部鉄器を紹介します。
紹介されている工房は、盛岡から「岩鋳」「空間鋳造(岩清水久生)」「釜定工房」「鈴木主善堂」「鈴木盛久工房」「薫山工房」「虎山工房」と、水沢地区の「小笠原陸兆」。
生活の中の必需品ではなくなった時代においても、伝統的な技術にデザインを吹き込むことで、逞しく発展していきました。
第2部「南部鉄器の模索・挑戦といま」最も目をひくのが、第3部の「現代の生活における南部鉄器」。南部鉄器と第一線のクリエイターが手がける空間によるコラボレーションです。
紹介されているのは、柳宗理が手掛けた南部鉄器のキッチンウエアを使ったコーディネイト、内田繁の茶室≪行庵≫と南部鉄器の道具、フランスのティー・サロンをイメージしたしつらえ、料理スタイリストの堀井和子が手がけた北東北の手仕事と南部鉄器によるテーブルコーディネイトの4種。
独特の存在感がある南部鉄器は、普段の生活にも心地よいアクセントを与えてくれます。
第3部「現代の生活における南部鉄器」時代の荒波を乗り越えて、欧米で評価されるに至った「made in Japan」 の南部鉄器。海外でも国内でも、益々活躍の場が広がりそうです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年1月10日 ]