東京オペラシティアートギャラリー「ジュリアン・オピー展」
文 [エリアレポーター]
カワタユカリ / 2019年7月9日
《Walking in New York 1》2019
巨大な作品に思わず息を呑みます。私たちはこの日を待っていました。
今、世界各地で展覧会が開催され、今日の現代アートシーンでは欠かすことができない存在のジュリアン・オピー。
日本の美術館では11年ぶりとなる個展が東京オペラシティアートギャラリーで始まりました。
本展は、絵画、彫刻、映像などの25点と、日本初公開のサウンドアート2点で構成されています。
全て2018~19年の作品でオピー氏の今を感じる展覧会ともいえるでしょう。
「ジュリアン・オピー」展示風景 撮影:木奥恵三
オピー氏の作品は、線と点の最小限の要素で表現されています。
顔のパーツもなくシンプルで輪郭のみの人物像であるにも関わらず、一度見たら忘れられないほどのインパクトがあります。
オピー氏は、実在する人を撮った写真を基に作品を制作しているそうです。
簡素化された線にその人の個性が表現され、私たちは、作品の人物が何を見て、何を考え、どこに向かうのか、そんなことを自然に思い浮かべることができます。
いつの間にか車の行きかう音、人の話し声、信号機の点滅音が聞こえてきます。作品となる人たちと大都会の雑踏に佇む自分の姿が見えるかのようです。
また目を引くのは、太く黒い輪郭線です。
彼は日本の浮世絵のコレクターで、この輪郭線は浮世絵からアイデアを得ているそうです。
一見単純にみえる作品を形成する下地に日本文化が含まれていることは日本人として嬉しく、彼の作品を通して自国の文化を改めて見つめ直す機会にもなります。
「ジュリアン・オピー」展示風景 撮影:木奥恵三
「音楽を聴くかのように、映画を観るかのように、展覧会から物語を感じてほしい。」
今回、オピー氏自身が本展の作品を選んでいます。
どこから見ても、どんな風にみても良いと鑑賞者が自由に楽しめるように、脚立に登ったり床を這いつくばって会場設営をしたこと、昼食を忘れるほど作業に没頭していたことや、誰よりも早く会場入りし鍵が開くのを待っていたことなどのエピソードが内覧会で披露されました。
またオピー氏自身の家族と一緒に会場を回りながら鑑賞し談笑する彼の姿も私にとっては意外に映りました。
クールに見えていた作品には、オピー氏の温かみというスパイスが隠されていたことを知ります。
そのスパイスはこの夏、日本中で人々を病みつきにしていくことでしょう。
「ジュリアン・オピー」展示風景 撮影:木奥恵三
エリアレポーターのご紹介
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カワタユカリ
美術館、ギャラリーと飛び回っています。感覚人間なので、直感でふらーと展覧会をみていますが、塵も積もれば山となると思えるようなおもしろい視点で感想をお伝えしていきたいです。どうぞお付き合いお願いいたします。
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