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    レポート
    もうひとつの輝き 最後の印象派 1900-20's Paris
    SOMPO美術館 | 東京都
    再評価が進む、忘れられた主流派
    20世紀初頭のパリ。フォービスムやキュビスムなどの前衛的な芸術運動が生まれ、その後の絵画に大きな影響を与えました…が、一般的な美術史ですが、実はこの時代に最も支持されていたのは別の芸術家たちです。
    (左)アンリ・ル・シダネル《コンコルド広場》1909年
    (左から)エドモン・アマン=ジャン《タデー・アマン=ジャンの肖像》1894年 / エドモン・アマン=ジャン《バラ色の帽子を被るタデー》1893年頃
    (左から)エルネスト・ローラン《入浴》1906年 / エルネスト・ローラン《後ろ姿の裸婦》1912年
    (左から)アンリ・マルタン《シモーヌ・ル・シダネルの肖像》1931年 / アンリ・マルタン《緑の椅子の肖像、マルタン夫人》1910年
    (左から)エミール=ルネ・メナール《自然公園のなかの川の精ナイアス》1895年 / エミール=ルネ・メナール《秋》1897年
    (左から)ガストン・ラ・トゥーシュ《長椅子》1908年頃 / ガストン・ラ・トゥーシュ《聖アントニウスの誘惑》制作年不明
    (左から)エミール・クラウス《リス川の夕陽》1911年 / エミール・クラウス《霞に煙るリス川》制作年不明
    (左から)アルベール・ベナール《泉の前のマデイラ島の女たち》1911年 / アルベール・ベナール《サビーヌを流れる小川》1920年
    (左から)ジャン=フランソワ・ラファエリ《ヴィクトル・ユゴー80歳を祝う祭り》1902年 / ジャン=フランソワ・ラファエリ《オークの古木》1907年
    本展の主役は「画家彫刻家新協会(ソシエテ・ヌーヴェル)」。サロンを支える新進芸術家が中心となった会員制のグループです。強い主義を持たず、画風は穏やか。世代的には印象派とモダニズムの間(1850年代後半から60年代の生まれ)にあたり、当時のパリ画壇では人気・実力ともに中心的な存在でした。

    展覧会は、ソシエテ・ヌーヴェルのメンバーを中心に紹介する企画。会場冒頭のトップバッターはエドモン・アマン=ジャン(1858-1936)です。

    エコール・デ・ボザール(国立美術学校)出身のアマン=ジャン。同窓のジョルジュ・スーラとはアトリエを共有する関係でした。欧州滞在中の児島虎次郎と親しく、児島が大原孫三郎の命を受けて洋画を蒐集する際に協力。大原美術館の収集作品第1号もアマン=ジャンの作品と、日本とも縁が深い画家です。


    エドモン・アマン=ジャンの作品

    続いてアンリ・マルタン(1860-1943)、同じくエコール・デ・ボザール出身です。新印象派的な点描法を用いた作品から、後年になると象徴主義的な作品も描いています。

    マルタンは壁画の名手としても知られ、ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの後継者とも評されていました。


    アンリ・マルタンの作品

    アンリ・ル・シダネル(1862-1939)も、エコール・デ・ボザール出身。フランス芸術家協会展(ル・サロン)への出品を通じて、アマン=ジャンやマルタンと親交を結びました。

    雨に濡れたパリを描いた《コンコルド広場》は、1910年の国民美術協会展に出展された作品。地面に反射する街灯の光で、発達した都会の姿を抒情豊かに描きました。

    ちなみに本展はアンリ・ル・シダネルの曾孫で美術史家のヤン・ファリノー=ル・シダネル氏が監修。氏の尽力もあり、本展には各作家の遺族をはじめ、多くの個人蔵の作品が集まっているのも特徴的です。


    アンリ・ル・シダネルの作品

    これ以外にも決して著名とは言い難い画家の名前も出てきますが、作品そのものは粒揃い。参考出品を含めて23人の作品が紹介されます。

    コレクターとしても知られるアンリ・デュエム(1860-1941)の《羊飼いと羊の帰還》は、森の向こうの夕焼けがドラマチック。ルネ=グザヴィエ・プリネ(1861-1946)の《カブールの浜辺》は、横長の画面に空が全く描かれていないにも関わらず、明るい陽射しと爽やかな風が感じられる優品です。


    あわせて23人の作品が紹介されます

    穏やかな視点で自然を捉えた作品は、先鋭的な芸術運動の前では徐々に影が薄くなっていきましたが、時代の共感を呼んでいたのは事実。近年、フランスで再評価の動きも進んでいます。

    展覧会は1年以上かけて全国を回る巡回展。東京の後は岐阜県美術館(11/14~2016年 1/17)、ひろしま美術館(2016年 1/30~3/27)、秋田市立千秋美術館(2016年 4/21~5/29)、北九州市立美術館分館(2016年 6/4~7/18)、鹿児島市立美術館(2016年 7/22~9/4)、郡山市立美術館(2016年 9/17~10/30)と進みます。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年9月8日 ]

    鑑賞のための西洋美術史入門鑑賞のための西洋美術史入門

    早坂 優子 (著)

    視覚デザイン研究所
    ¥ 2,052

    料金一般当日:1,200円
     → オトクなチケットはこちらからicon


    ■最後の印象派 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2015年9月5日(土)~11月8日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00
    ※入館は閉館の30分前まで
    休館日
    月曜日休館 ただし9月21日(月・祝)、10月12日(月・祝)は開館
    住所
    東京都新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42F
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.sjnk-museum.org/
    料金
    一般 1,200円(1,000円)/大・高校生 800円(650円)※学生証をご提示ください/シルバー<65歳以上> 1,000円 ※年齢のわかる物をご提示ください/中学生以下 無料 ※生徒手帳をご提示ください
    障がい者とその介護者(1名まで):無料
    ※障害者手帳「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」をご提示ください。ただし、被爆者健康手帳をお持ちの方は、ご本人のみ無料。
    展覧会詳細 「もうひとつの輝き 最後の印象派 1900-20′s Paris」 詳細情報
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