細見美術館のある京都ともゆかりが深く、日本美術の中でも人気を誇る琳派と伊藤若冲。
充実したコレクションを誇る所蔵品からの選りすぐりの作品と、それらと桃山陶芸を組み合わせて見せる試みも楽しい、大変興味深い展覧会です。
琳派の展示室には、酒井抱一、鈴木其一、中村芳中といった琳派を代表する絵師はもちろん、もう少し後の時代の、その系譜を継ぐ絵師による作品も豊富に展示されています。
丁寧に収集を重ねたコレクターの姿勢から、時代の流れや作風の多彩さを感じることができます。
酒井抱一 鹿楓図団扇 江戸後期 紙本金地着色 1柄
神坂雪佳 金魚玉図 絹本着色 1幅 明治期(展示期間 ~10/25)
若冲作品のコレクションの充実も細見美術館ならではのもの。
若冲作品を代表する鶏図は前期、後期ともに見逃せない作品が展示され、水墨の作品で40代と80代を見比べられるのが見どころです。
後期は動植綵絵も思わせる雪中雄鶏図が出展されますので、機会があればぜひ三作品を比較いただければと思います。
伊藤若冲 花鳥図押絵貼屏風 江戸中期 紙本墨画 6曲1双
三室目には、琳派作品と織部、若冲作品と志野という桃山陶芸とのコラボレーションが展開されています。
月に露草図扇面 中村芳中 紙本著色 1幅 江戸後期 / 織部千鳥文手付四方鉢 施釉陶器 1口 桃山時代
伊藤若冲 虻に双鶏図 紙本墨画 1幅 江戸中期 / 志野草花文鉢 施釉陶器 1口 桃山時代
優美で繊細な琳派と重厚で侘び寂びの効いた織部、緻密かつユーモラスな若冲の水墨画と柔和で温かみのある志野。
個人的には逆の組み合わせを予想していたのですが、それぞれの作品の世界観と相まって、素晴らしい化学反応を見せていただきました。
収集した作品で来客をもてなした歴代細見家当主の「細見好み」もうかがえますが、かしこまった茶席に想いを馳せるというよりも、呼応するように寄り添う作品たちを純粋に楽しみたい気持ちです。
まだ暑さの残る日に伺いましたが、季節を先取りした秋満載の美しいモチーフが溢れていたのも印象的です。
なかなか気軽にお出かけのできない今日この頃ですが、素晴らしい作品とともに前期は秋の、後期は冬の風景に心癒されてみてはいかがでしょうか。
エリアレポーターのご紹介 | 白川瑞穂 関西在住の会社員です。学生の頃から美術鑑賞が趣味で、関西を中心に、色々なジャンルのミュージアムに出かけています。観た展示を一般人目線でお伝えしていきます。
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