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    レポート
    中国宮廷の女性たち 麗しき日々への想い 北京藝術博物館所蔵名品展
    渋谷区立松濤美術館 | 東京都
    西太后は天才画家?
    明・清の皇帝の寺院である万寿寺の中にある北京藝術博物館。北京市文物局に直属する総合博物館で、特に明清時代の工芸品は質の高さで良く知られています。所蔵品の中から書画や染織・金工・陶磁器・琺瑯(ほうろう)など各種の工芸品など118点を紹介、あの悪女が描いた画も出展中です。
    (左から)《清贈一品夫人汪母王夫人像》 / 《粉彩福寿盤》(粉彩の福寿紋の皿) / 《粉彩過枝花卉紋碟》(粉彩の花卉紋の小皿)
    (左から)《紅紗地納紗綉百子図門簾》(百子図を刺繍した入口の垂幕) / 《牙黄色緞地絨綉慈禧御筆松樹紫藤綬帯鳥図片》(西太后の画をもとに刺繍した織物) / 《藍江綢地綉五福齢椿報喜図片》(福を願う図柄を刺繍した織物)
    (左から)《明黄緞綉四合菊花文墊套》(菊花紋の座布団) / 《明黄江綢地綉纏枝花万福靠背套》(椅子の背もたれカバー) / 《黄緞綉蕃蓮万福迎手套》(脇息の一種)※2点とも
    (左から)《湖藍花果紋暗花縐綢女衫》(花果紋の縮緬の女性用上着) / 《葱緑百蝠紋暗花綢女衫》(蝙蝠紋の女性用上着) / 《桃紅色暗花縐綢三藍綉花蝶福寿紋女襖》(花蝶福寿紋の刺繍入り女性用上着) / 《紅緞地綉富貴三多紋女襖》(三多紋の刺繍入り女性用上着)
    (左下から反時計回り)《玉龍首觿牙》(龍の首がついた玉のくじり) / 《玉鏤雕鸚鵡紋佩》(鸚鵡を透かし彫りした玉佩) / 《玉仙人乗槎紋佩》(仙人の図柄の玉佩) / 《碧璽松鼠葡萄紋佩》(葡萄に栗鼠模様の佩) / 《琥珀人物紋香嚢》(人物紋の琥珀の匂い袋) / 《玉鏤雕寿字花卉紋香嚢》(透かし彫りの玉の匂い袋)
    西太后《梅花図》
    (左から)《粉彩百蝶紋賞瓶》(粉彩の百蝶紋の鑑賞用瓶) / 《粉彩雲蝠紋賞瓶》(粉彩の雲蝠紋の鑑賞用瓶) / 《藍釉賞瓶》(藍釉の鑑賞用瓶)
    (手前)《粉彩開光海屋添籌図如意》(粉彩の長寿を願う紋様の如意) / (奥)《銅胎画琺瑯 "三陽開泰" 図手炉》(三陽開泰図の七宝の手あぶり)
    (手前)《龍紋剔紅方盒》(龍紋の漆の蓋物) / (奥)《嵌螺鈿人物紋黒漆盒》(螺鈿の人物紋の蓋物)
    万寿寺は明朝の1577年の創建。清代に何度かの拡張を経て、皇室の重要な寺院になりました。

    全国重点文物保護単位の一つでもあるこの寺院に設けられているのが、北京藝術博物館です。原始時代から明清までの中国古美術品を所蔵・公開する一方で、海外の美術展も行われており、浮世絵や伊万里焼の展覧会が開催された事もあります。

    本展は北京藝術博物館の所蔵品から、女性をテーマにセレクトした逸品を6章で紹介する企画。まずは刺繍からです。

    伝統的な女性の手仕事である刺繍。中国の宮廷では、最高級の技を駆使した糸による芸術が作られました。子孫の繁栄や健康・長寿などを意味する吉祥のモチーフには、女性たちの願いが現れています。


    第1章「女性の手仕事 ─ 刺繍」

    続いて服装と装飾品。明朝は漢民族の服、清朝では満州族の服と様式が異なりますが、どの時代においても階級ごとに違いがありました(清代末期には満州族と漢民族の服装は融合していきます)。

    装飾品は首飾や串飾、佩飾(首や腰に吊るす装身具)など。美しく身を飾るのは、いつの時代も女性の憧れです。金、玉、琥珀、ガラス、そしてカワセミの羽まで使った多彩な装飾品が並びます。


    第2章「鳳凰の儀容 ─ 服装」、第3章「簪と朝の化粧 ─ 装飾品」

    明から清の時代は、女性の書画家が数多く活躍しました。北京藝術博物館には、在野の女性書画家だけでなく、上流階級の女性が残した書画も数多く伝わっています。

    中でも最高位といえるのが慈禧、すなわち西太后が書いた書画です。「中国四大悪女」のひとりとされる西太后は、実は教養豊かな人物。書も画も人並み以上の作品を作っています。

    とはいえ、実は代筆が多いのも事実。「慈禧 御筆」と書かれていても、その多くは繆嘉蕙による代筆とも言われています。確かに良く見ると、同じ作者とは思えないほどレベルに差があります(つまり、下手な方が西太后の真筆の可能性が高い作品です)。


    第4章「薫り高き心 ─ 書画」

    上階は家居生活と文玩書籍。清代末期の中国陶磁器がこれだけまとまって出展されるのは、ちょっと珍しいかもしれません。

    ここでは目立つ人物像を二点ご紹介しましょう。ひとつは《清贈一品夫人汪母王夫人像》。一品は皇帝が任命する最高位の官位で、この像はその夫人の肖像。総理大臣の奥様の肖像画、といったところでしょうか。

    もうひとつは、展覧会のメインビジュアルでもある《清代公主像》。描かれた人物が特定されていないにも関わらず、皇帝の娘である「公主」と名づけられているのは、身に着けている冬の朝服からです。

    また、さらに分かりやすいポイントが、服に描かれた龍の爪。五本の爪を持つ龍は、皇帝とその一族しか用いてはならないのです。《公主像》の龍は五本、《一品夫人像》は四本です。


    第5章「奇巧を尽す ─ 家居生活」、第6章「文雅の室 ─ 文玩書籍」

    中国人と日本人。同じ東アジアに住み、似たような顔立ちですが、習慣や考え方が異なる事は少なくありません(例えば中華圏の人に対し、慶事に置時計や掛時計を贈るのは極めて無礼です。傘もNG。理由は図録でご確認ください)。それぞれに違いがあるのは当たり前。その上で、次のステップに進みたいものです。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年6月8日 ]

    TOKYO美術館2015-2016TOKYO美術館2015-2016

     

    エイ出版社
    ¥ 999


    ■中国宮廷の女性たち 麗しき日々への想い に関するツイート


     
    会場
    会期
    2015年6月9日(火)~7月26日(日)
    会期終了
    開館時間
    特別展期間中:午前10時~午後6時(金曜のみ午後8時まで)
    公募展・小中学生絵画展・サロン展期間中:午前9時~午後5時
    最終入館はいずれも閉館30分前までです。
    休館日
    6月15日(月)、22日(月)、29日(月)、 7月6日(月)、13日(月)、21日(火)
    住所
    東京都渋谷区松濤2-14-14
    電話 03-3465-9421
    公式サイト http://shoto-museum.jp/
    料金
    一般 500円(400円)/大学生 400円(320円)/高校生・60歳以上 250円(200円)/小中学生 100円(80円)
    ※( )内は団体10名以上
    展覧会詳細 中国宮廷の女性たち 麗しき日々への想い 北京藝術博物館所蔵名品展 詳細情報
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