来場者を迎えるのは、菅原直之助《羽衣図 刺繍額》と《鞍馬天狗図 刺繍額》。こちらの作品は遠くから見ると絵画のようですが、近づいてみると…なんと刺繍。
写真ではお伝え出来ないほどの精緻さは、まさに「超絶技巧」。糸に光が反射するので、見る角度によって印象が変わるのも見どころのひとつです。
会場内で目を惹く鮮やかな水色は、七宝家・濤川惣助の作品です。
濤川惣助は東京を中心に活躍した七宝家で、色釉(いろぐすり)の境界となる植線(輪郭線)を、最終段階の焼き上げで取り外す「無線七宝(省線七宝)」の技術を開発した人物でもあります。
展示されている《七宝式花卉図瓶 一対》は、水彩画のようなぼかしが特徴。こちらも近くで見ると、ため息が出るほど美しい作品です。あまり近づきすぎて、ガラスケースぶつからないようにご注意ください。
1章「岩﨑家高輪本邸を飾った明治美術」、2章「幕末明治の美術」、3章「岩﨑家と近代美術~第4回内国勧業博覧会と名品~」ジョサイア・コンドルが設計した岩﨑家高輪本邸(現・関東閣)のビリヤード・ルームに飾られていた、黒田清輝《裸体婦人像》も紹介されています。
《裸体婦人像》は「腰巻事件」を引き起こした問題作です。1900年、フランスから帰国した黒田が第6回白馬会展に出品しましたが、当時の日本では裸体画は公序良俗に反するとされ、下半身が布で覆われて展示される事態に。これが「腰巻事件」の由来です。
残念ながら、ビリヤード・ルームは戦火に焼かれ、残っていません。会場では作品ともに、ビリヤード・ルームの写真パネルも展示され、当時の様子を紹介しています。
4章「明治の彫刻・工芸の粋 Part.1」、5章「セントルイス万国博覧会とゆかりの美術」、6章「明治の彫刻・工芸の粋 Part.2」"画鬼"河鍋暁斎の傑作「地獄極楽めぐり図」は、本展で修復後初の大公開となります。
全40図からなるこの画帖は、暁斎の大の贔屓だった日本橋大伝馬町の大店、小間物問屋の勝田五兵衛が、わずか14歳でこの世を去った娘・田鶴(たづ)を一周忌で供養したいと、暁斎に依頼したものです。
「地獄極楽」と聞くと「怖い絵」と思われますが、暁斎の丁寧で優雅な筆致による地獄極楽道中記は、とてもユーモラス。こちらの作品は、会期中場面の展示替えがあります。詳しくは公式サイトをご覧ください。
インターネットミュージアムでは、全国の
「明治150年」関連の展覧会をご紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。
[ 取材・撮影・文:静居絵里菜 / 2018年7月18日 ]